金融機関の取り組み──みずほ銀行
高度なプーリングにも対応

アドバイザリーと内外一体のサービスに強み

今回J-MONEYが実施したCMSに関するアンケートで、国内プーリングサービス、国内貸借管理、海外フィジカルプーリングにおいて最もよく利用されている金融機関に選ばれたのがみずほ銀行だ。

同行e-ビジネス営業部営業推進第二チーム次長の楠本邦博氏は、CMSにおける強さの源泉を「アドバイザリー」と語る。「顧客のニーズをとらえ、サービスに反映させるという基本的なところで、ニーズへの対応力について高い評価をいただいている。みずほ銀行では『Mizuho Advanced CMS』程度の企業グループが導入している。この豊富な導入実績と顧客ニーズを踏まえた不断の商品レベルアップが、CMSを活用した資金管理のさらなる効率化の提案など、アドバイザリーサービスの強化につながっている」

近年では、「内部統制の強化」「業務効率化」「M&Aをはじめとする組織再編」がCMSを導入する契機となっているという。これは国内CMSに限らず、海外拠点をも巻き込んだグローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)を導入する目的とも直結する。

「国内企業のCMS導入は2000年前後から活発化し、15年経った現在はかなり定着してきた感がある。一方、GCMについては先進的な企業が10年ほど前から導入を始めたが、海外進出する日本企業が急増するのに伴い、ここに来てGCMへの意識の高まりを顕著に感じるようになった。こうしたニーズに応えるべく、当行では国内と海外のトランザクションバンキングをワンストップで提案する『内外一体営業』を強化している」(楠本氏)

GCMのラインアップを整備、規制通貨への取り組みも積極的

「コーポレートガバナンス・コードに象徴されるように、日本企業のガバナンスへの要求が高度化している。一方で、これまでは海外の現地法人に任せていた各拠点での財務管理について本社が一元的に行うのは容易ではなく、現地法人の預金口座を見えるようにするだけでも難易度は高い。そうした状況を変えなければ、という声は日増しに大きくなっている」と語るのは、みずほ銀行e-ビジネス営業部のGCMS推進室室長、徳久康人氏だ。

GCMへのニーズや期待が高まるなか、みずほ銀行ではトランザクションバンキングに関するサービスの整備と強化を進めており、付随するさまざまな商品、サービス・ラインアップを「MIZUHO Global e-Sett.」として顧客に総合的に提供している。GCMに関しては、海外の複数の金融機関と接続してのプーリングやネッティングといった機能などを有している。「この2年間で、GCMやe-Bankingなどのプラットフォームの整備に力を入れてきた。グローバルサービスのラインアップは、決して欧米の銀行に劣らないと自負している」(徳久氏)

GCMの中身も進化している。例えば地域をまたいでプーリングを行う際には時差が障壁となるが、同行のシステムではさまざまな状況でのプーリングに対応できると徳久氏は説明する。「近年では米ドルをニューヨークではなく、東京やロンドンに集めたいというニーズも出てきている。『東京からニューヨークへ』とは逆の時差となる資金移動も、システムの整備により対応できるようになった」

規制が多いアジア通貨への取り組みにも注力している。2014年12月、ルネサスエレクトロニクスが日本企業として初めて導入した自由貿易区版クロスボーダー人民元プーリングは、みずほ銀行のGCMによるものだ。「欧米の金融機関にはない、当行ならではの『日本品質』を、自信を持って打ち出していきたい。日頃のコミュニケーションを通じて顧客も気づいていない本質的なニーズをとらえて、最適なスキームを提案できるのが私たちの強みだ」と徳久氏は強調する。