新型コロナウイルスの感染拡大は、年金基金などの機関投資家の運用戦略に大きな影響を及ぼしている。特にポートフォリオの中心を占める債券・クレジット分野では、国債や投資適格社債へ資金が集中し利回りが下がる一方、ハイイールド債など低格付け資産の利回りは高止まりし、スプレッドは大きく開いた。世界で広がるイールド・ハンティング(利回り追求)の動きは、今後さらに激しくなるだろう。機関投資家は債券やクレジット資産を自らのポートフォリオでどう位置付けるべきか。有識者に話を聞いた。(記事内容は2020年12月9日時点)
2021年は各国国債の格下げリスクに注意。投資適格社債や金融機関の劣後債は堅調
2020年8月、市場に変化が現れた。各国の主要経済指標は持ち直し、金価格は8月上旬に急騰後、多少下降したのち横ばいで推移。9月には米国株式市場も頭打ちの傾向が強まり、利食い売りの動きが出始めた。アライアンス・バーンスタイン 運用戦略部長 兼 ポートフォリオ戦略室長の荒磯亘氏は、「FRB(米連邦準備理事会)の買い支えもあり、2020年はかつてないほど社債が発行されたが、大企業を中心に9月頃から年末にかけて買入消却して財務の健全性の改善を図るなど、格下げ対策を行っている。社債市場は正常状態へ緩やかに回帰する兆しが出てきた」と話す。
ここから投資家はポートフォリオにどう取り組むべきか? コロナ・ショック前の機関投資家の運用では、オルタナティブや不動産、コモディティなど伝統資産とは異なる分野へポートフォリオを分散させる動きが多く見られた。荒磯氏は、「コロナ後は、新しい資産を試すより、現在のポートフォリオの頑健性を強化していく流れが強まるだろう」と指摘する。
コロナ不況対策として、世界の主要中央銀行は財政と金融の2つの政策を実施してきたが、今後は財政政策が途絶える可能性もある。荒磯氏によると、そうした局面では、実は社債が安全資産として浮上するという。パウエルFRB議長の任期は2022年3月までで、金融政策が反転するような事態は起こり得ないだろう。2021年は投資適格社債などがサポートされ続ける見込みだ。一方で、国債は格下げリスクが浮上している。「負債を増やしながらも景気刺激策を推し進めてきた反動が2021年に来る。税収の増減次第で、各機関の格付けウォッチに指定される国が出てくることが予想される。ブレクジットがあった英国は特に注視したい」(荒磯氏)
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