高田 創
岡三証券
グローバル・リサーチ・センター
理事長
高田 創

日本の出口は2020年代半ばまでないか

1970年代以降、変動相場制になってから日米欧の中央銀行の金融政策は連動し、緩和から利上げに至る転換はいつも米国が先頭で、最後が日本だった。FRB(米連邦準備理事会)は、2020年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で2023年末まで現在のゼロ金利状態を続けるとの姿勢を示している。

その結果、過去のジンクスに従えば、日本の出口は早くて2024年以降、さらに米国利上げから日本の利上げに至る期間の平均は約1年半であっただけに、経験則上、2025年半ば頃まで日本の出口はないことになる。新型コロナウイルス感染拡大によるショックに伴う金融政策の特徴は、その時間軸がグローバルに従来に比べて長いことにある。

FRBは「Accommodation」へ、まだ緩和は長引く

米国では日本と異なりマイナス金利やYCC(イールドカーブ・コントロール)のような追加緩和策の可能性は高くない。ただし、日米欧の金融政策を先導する米国の金融政策は当面、出口が封印された状況が続きそうだ。FRBのブレイナード理事は2020年9月1日の講演でFRBの政策が、「Stabilization」から「Accommodation」にシフトしているとし、金融緩和の継続を強く示唆するコメントを行い注目された。そのことから、以下の図表のように、世界的な金融緩和で中央銀行のバランスシートが非連続的に拡大することの影響が資産市場を中心に生じやすい。

【図表】日米欧の中央銀行のバランスシートの推移

【図表】日米欧の中央銀行のバランスシートの推移
(出所)FRB、ECB、日本銀行
※各月末の為替の値で米ドルに換算、直近は2020年11月

また、FRBのスタンスが、当初の市場の思惑以上に長期間にわたって現在のゼロ金利政策を維持するとの姿勢にあることによる市場センチメントへの影響も大きい。その結果、日欧の金融政策も出口を封印され、大量な資金が世界中に広がる状況が続くことになる。こうした効果が資産市場の拡張をもたらし、金融の不均衡が生まれやすいことには留意が必要だろう。

注目されるIMFの財政政策への見方の転換

もう一つ注目されるのは、財政政策に向けた世界的な潮流の転換にある。IMF(国際通貨基金)が公表した2020年10月の財政政策に対する財政モニターでは、各国の公的債務水準は歴史的な高さにあることを認識しつつも、2021年にかけて更なる財政面のサポートの重要性を示している。

こうした姿勢は、IMFが従来、各国に財政健全化を強く主張してきた基本的スタンスの転換として注目される。以上のIMFの姿勢は世界各国の財政に対する見方を象徴するものと考えられる。しかも、コロナショック下で景気悪化を食い止めるには、企業支援や雇用支援を中心とした財政政策以外に対応策はないというのが世界各国のコンセンサスとなっており、グローバルに財政拡大への問題意識が後退する状況にあることが注目される。

金融財政政策のサポートの背景には先行き経済への慎重論

以上の金融財政政策のサポート継続論の背景にあるのは、先行き経済に関する根強い慎重論である。2021年を展望し、多くの政策当局者の見通しは「L」や「K」の文字で代表されるように、回復力の鈍さや、二極化に伴う回復力に乖離がある点である。

また、コロナショックに関する感染自体についても依然不透明である。2020年11月に行われたG20(20カ国・地域)での認識も、コロナ感染の再発の波がくるなかで景気回復への不安を指摘する声が多かった。しかもグローバルでもコロナに影響を受けやすい、face to faceのサービス業を中心とした中小零細企業の経済弱者の苦境が続くだけに、政治的配慮からもサポートを緩めにくい状況にある。

緩和の長期化に伴うリスクテイク

市場では、「音楽が終わるまで踊らなくてはいけない」、「パンチボールが片付けられるまでパーティが続く」との表現で中央銀行の緩和が続くまでリスクテイクが継続するとされやすい。その趣旨からすれば、本論での中央銀行や財政当局のスタンスは、なかなかパーティが終わらないとの安心感を市場に与えることにつながる。しかも、待機資金が2020年11月の米国大統領選後、再び市場に流れ込む状況にあるなか、2021年に向けてもリスクテイクが広がりやすい。一方、コロナショックが残存する限りは緩和が続くとの観測が金融不均衡や社会における一層の格差の副作用をもたらしやすい。

コロナで影響を受けやすい業種が深刻な資本不足の状況にあるだけに、その支援に向けて軍資金を確保するためにも資産価格の上昇が従来に比べて許容されやすいことが今次コロナショック下の特徴である。金融財政政策の緩和状況が予想以上に長期化しやすいことも念頭に置く必要があるだけに、2021年に向けてリスクを意識しつつも資産運用の次元を拡大することが課題になりやすいだろう。

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