東証1部と新興市場では優良株は継続して上がりやすい

日本株の投資戦略の1つとして「リターンリバーサル」を紹介します。

現在、東証にはおよそ1800の銘柄が上場されています。その中には値上がりを続ける優良株があれば、逆に値下がりを続ける銘柄もあります。しかし、通常は上がり過ぎた銘柄はどこかのタイミングで売られ、下がり過ぎた銘柄は買われ、全体のリターンがあるレベルに回帰していきます。リターンリバーサルは、このようなマーケットの動きを利用した投資戦略です。

米国の株式市場では、値上がりしている銘柄を買い、値下がりしている銘柄を売る「モメンタム戦略」が効くといわれます。優良株は継続して上がりやすく、「勝ち馬に乗る」戦略が奏功しやすいのです。もちろん値上がりの継続には限度があり、たびたび価格のクラッシュが起きます。直近では2014年4月にナスダック市場でミニ・クラッシュが起きました。

これに対し、日本では株価の調整が起きやすく、モメンタム戦略よりリターンリバーサルの方が効くと、経験則として以前からいわれています。

そこで、実際にリターンリバーサルがどのくらいの効果を生んだか、過去の株価をもとに調べてみました。

まず、東証1部、東証2部、マザーズ、ジャスダックの市場ごとに、各銘柄の期待リターンを計算します。市場の極値同士の依存構造を見るために、期待リターンが最も低い10-50銘柄程度を買い、最も高い銘柄を同じだけ売り、1-2週間後に反対売買を行う。

これを毎週繰り返します。結果は、驚くべきパフォーマンスを叩き出しました。「失われた20年」にこの戦略を実施していれば、理論上は資産価値が20年で10倍近くに増えることもあり得ました。

リターンリバーサルのパフォーマンスは、市場ごとに特徴が分かれました。最も成績が良かったのは東証2部で、値上がり、値下がりの両方で高い収益が得られました。一方、東証1部では売られ過ぎた銘柄は上がりやすいのですが、買われている銘柄は短期間では価格調整がされがたく、さらに買われる時期も散見されます。「谷深ければ山高し」は成り立っても、山が高ければ、谷が深くなるということは短期間の取引では観察されません。新興市場も東証1部と同様に、上は(弱い)モメンタム戦略、下はリターンリバーサルが効きやすい傾向が表れました。

さらに付け加えると、リーマン・ショックのようなマーケットに大変動が発生したときの方がリターンリバーサルの効果が顕著でした。外的要因により価格がフェアプライスからずれているときほど利益が出やすくなります。

近年、年金を中心に機関投資家からのスマートベータの需要が高まっています。伝統的な投資戦略とは異なるアプローチでリスク・リターンの最適化を図る新しい戦略は、今後さらに注目を高めるでしょう。