Brexit──合意なき離脱リスクの増大
ジョンソン英首相の協議打ち切りも辞さないとの警告、合意なき離脱が英国にとって「望ましい」との主張、さらには離脱協定を一部無効化する国内市場法案の発表は、それだけでもドラスティックな羅列に見えるであろう。こうした流れを踏まえれば、英・EU関係のトーンは悪化している。1月24日に署名された北アイルランドに関する議定書を含む離脱協定への不満を蒸し返すことで、交渉担当者間の信頼を損ね、将来的なパートナーシップを巡る協議の進展をも脅かすと考えられるなど、展開は思わしくない。こうした交渉姿勢を前に、英国の信用をどう置き、米国、カナダ、日本などがどう妥結するか、新たな協定位置づけにも不透明感が増す。
こうした展開が、「合意は達成不能」という英政府の考えに起因するものか、あるいはEU側に重要な問題で譲歩させるために圧力を高めることを狙った交渉戦術を純粋に意図したものかは、明確ではない。英政府はフィンテック分野など戦略的な重要産業を支えることや、コロナ禍をどう乗り切るか、国家補助制度など柔軟に実施したいと考えているが、こうした考えはEUの考えには反するものであり、落とし所が見えなくなっている。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。