年金運用とマーケットの研究 米連邦公務員向け確定拠出型年金(TSP)の動向
- 米国連邦政府職員等を対象としたDC年金で米国最大の年金ファンド
- トランプ政権からの要請を受け中国企業への株式投資を無期延期
Thrift Savings Plan(TSP)は、米国連邦政府職員を対象としたFERS(Federal Employees Retirement System)と米国軍人等制服組を対象としたBRS(Blended Retirement System)の加入者向け個人勘定型DC年金制度となっている。
TSPの加入者数は約550万名、運用資産残高は6,000億ドルを超え、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)やカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)といった著名な大型年金の運用資産残高を大きく上回り、米国最大の年金ファンドとなっている。
TSPが加入者向けに提供している運用商品は、5つの個別資産ファンド(米国国債ファンドと4つのパッシブ運用ファンド)と、これら5つのファンドの組み合わせで提供されるライフサイクル・ファンドのみで、DC年金としても非常にシンプルな運用資産構成となっている。
中国企業への投資の無期延期
「中国企業への投資」が問題となったのは、TSPが提供している外国株式パッシブ・ファンドが連動対象とする株式インデックスを、先進国のみを対象とする現在のMSCI EAFEインデックスから、新興国を含むMSCI ACWI ex US Investable Marketインデックスへと切り替える計画が進んでいたことによるものである。
新興国の株式インデックスには中国株が含まれるため、トランプ政権から問題視されていたが、TSPの運用を管理するFRTIB(The Federal Retirement Thrift Investment Board)では、投資という観点からは新興国株式を含むインデックスへの切り替えが望ましいとして、インデックス切り替えの方針を維持したため、トランプ政権がFRTIBを構成する理事のうち3名の差し替えるなどの事態へと発展、FRTIBは5月に入ってインデックス変更の無期延期を発表している。
米中対立激化の中での象徴的な事象の一つではあるが、現状TSPは中国株への投資は行っておらず、インデックスの変更があれば発生した中国株への新規投資が失われてはいるが、TSPの運用ファンドからの中国株売却が発生するものではない。
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