グローバル・キャッシュ・マネジメント主要プレーヤーに聞く
グローバル・キャッシュ・マネジメント・サービスを展開する金融機関に、資金管理の現状と各行の強みを聞いた。
(掲載は邦銀・外銀、五十音順)
みずほコーポレート銀行
国内で積み上げた高度な資金管理サービスを海外でも展開
私たちは日本の金融機関として、キャッシュ・マネジメント・システムの開発にいち早く着手し、企業の資金管理の高度化に貢献してきました。キャッシュ・マネジメントでは国内トップクラスの経験と技術を有していると自負しています。
現在の資金管理ニーズは国内のみならず、海外にまで広がっています。製造や小売り企業などさまざまな企業が海外進出を進めた結果、導入企業のすそ野が広がりました。
近年、資金管理の需要が高まっているのがアジア、とくに中国です。日本の小売り企業は中国への出店を拡大しており、同一地域に複数の店舗を展開する企業は少なくありません。必然的に、店舗の出入金管理や支払い代行などさまざまな面で資金管理ニーズが生じます。そこで「みずほのきめ細かなサービスを海外でも使いたい」という声がお客様から届くようになりました。
「みずほグローバルCMS」は、日本で培った資金管理手法を生かして、海外でも日本のお客様に提供しているのと同水準のサービスを提供します。国内外で一つのシステムを共有する際、言語の壁が生じないようシステムは7カ国8言語に対応。さらに各国の銀行と協力し、現地のニーズに機動力を持って対応します。国土の広大な中国では、1万店舗のネットワークを有する地場銀行と提携。店舗の売上げ回収や釣銭のデリバリーといった、商流に伴うお金の流れをすみずみまでサポートしています。サービスの質が評価され、欧米系企業がアジアの資金管理先として当行を指定するケースも出ています。
これからはシステムの性能だけでなく、国境を越えた資金の移動に関する知見など、銀行の“知力”を競う時代になるでしょう。国内で積み上げた資金管理のノウハウを生かし、複雑な課題にも丁寧に応えていきます。
三井住友銀行
アジアでトップ3に入るトランザクション・バンクを目指す
海外進出を図る企業がますます増加するなか、グローバルベースでのキャッシュ・マネジメントのニーズはさらに高まっています。当行では国内でいち早く専門部隊を発足するなど、キャッシュ・マネジメント・サービスに対するコミットメントを示してきました。
現状主な顧客は日系企業です。なかでもアジア地域で拠点網を増やし、幅広い日系企業のニーズに応えています。アジアには日本の主要なメーカーや商社・小売り企業が多数進出しています。要求レベルが高いといわれる日系企業を丁寧にフォローしている点が当行の強みです。
加えてここ数年は、非日系企業にも注力。アジアに進出してくる欧米系企業や韓国、中国の企業に対象を絞ってアプローチし着実に成果を重ねています。信用力や知名度の向上により、最近では、非日系企業がアジアでキャッシュ・マネジメント・パートナー・バンクを選ぶ際のショートリスト(候補者リスト)にも常連として残るようになりました。
2012年4月の組織改編で、国際部門と国内の法人部門・企業金融部門を横断する「トランザクション・ビジネス本部」を設置し、決済ビジネスのさらなる強化を掲げました。人材面の現地化も推進しています。グローバルCMS室はすでに3分の2が現地スタッフで、非日系案件、地場金融機関との提携案件、各国政府当局規制などに対応しています。企業ニーズにマーケットインで迅速に対応できるよう商品企画を担う部隊をシンガポールにも設置している点に加えて、そもそも室長の私がシンガポールに駐在し室の本拠地を同国に置いている点も特徴です。
アジアの金融機関としては初めて、アジア太平洋10国・地域で、各金融機関と統一様式によるデータ送受信を可能とする国際的なネットワーク・システム「SWIFT」を利用した企業顧客向け資金管理サービスの提供も開始しました。早々にアジアでトップ3に入るトランザクション・バンクになり企業のニーズやリクエストにきめ細かく応えていきます。
三菱東京UFJ銀行
圧倒的な顧客基盤に対し海外でも「日本品質」を徹底
これまで日本で培った高品質のサービスをグローバル・キャッシュ・マネジメントにおいても徹底する──。その目的を果たすため、当部は2011年4月に発足しました。当行は世界中に支店や現地法人、出張所を構え、現地の決済システムにも加盟しています。これは邦銀では圧倒的な規模です。また、企業にとってキャッシュ・マネジメントとトレードファイナンスを含む資金調達は表裏一体の関係にありますが、当行は健全な財務基盤による安定したサービス提供が可能です。
そうしたネットワークや財務の強みに加えて、日本企業との総合取引を通じ、お客様の経営戦略や決済面の課題を熟知している点が当行の強みです。キャッシュ・マネジメントのプラットフォームを提供するだけではなく、お客様固有のニーズに合わせ、きめ細かな提案やプロダクトサービスのカスタマイズを実現しています。また、提案・導入から運用後のサポートまで、取引店の専任の担当者(RM)が対応、融資業務を含めた銀行業務全般をワンストップで提供できるのも当行ならではといえるでしょう。
ひと口に日本企業の海外進出といっても段階があり、それによってグローバル・キャッシュ・マネジメントに求められるニーズは異なります。例えば、海外進出の初期段階では、本社から現地の資金を「見える化」することが重要です。次のステップとして、国や地域内での資金の流動性管理へのニーズがあり、最終的にはこれを地球規模で行う全体最適が求められます。当行では日本企業の成長に合わせた5ステップでキャッシュ・マネジメントを考え、段階ごとに最適なソリューションを提案します。これも企業が抱える経営課題に直接向き合ってきたからこそ確立できたアプローチといえます。
日本企業のニーズを真に理解し、常に「日本品質」のサービスを提供できる我々にぜひご期待ください。
HSBC
商慣習の異なるアジアに精通、テーラーメードの最適解を提供
日本でグローバル・キャッシュ・マネジメントというと、グループ内で資金を融通し合い対外債務を減らす「流動性管理」の議論になりがちです。しかし企業のキャッシュを有効活用するには、できるだけ資金の回収を早める一方、支払いに猶予を持たせることが最も基本的で重要なテーマです。資金の回収と支払いの効率化に関するサービスこそがグローバル・キャッシュ・マネジメントの肝であり、流動性の管理も重要ではありますが、支払・回収の効率化を抜きには語れないものだと理解しております。
グローバル展開する日本企業にとって喫緊の課題は、アジアにおけるキャッシュ・マネジメントでしょう。欧米と違い、アジアは通貨も商慣習も国ごとに異なります。小切手が多く用いられる国があれば、送金ベースや現金決済が主流の国もあるなど、ローカル・ルールが色濃く残るのが特徴です。当然、資金の回収と支払いのサイクルも一様ではありません。当行はアジア19カ国に進出しており、多様な商慣習や制度を使いこなすためのサービス体制を各国で構築しています。
昨今は特に中国の案件が増えています。製造業の生産拠点の進出であれば、米ドル建ての決済で事足りました。しかし中国の内需拡大とともに、販売拠点の進出も増加し、人民元を扱わざるを得ない日本企業が増えています。管理体制下にある人民元は現状、グループ内貸付のような格好で国外へ自由に持ち出すことができません。そのため中国子会社に人民元が溜まってしまう構造になりがちです。こうした課題に対処するため、当行は長年の実績と中国国内での人脈やネットワークを駆使し、個別の事情に合わせたテーラーメードの最適解を提供しています。
アジアに限らず、グローバルに張り巡らされたネットワークにより、日本にいながら世界各国の支店のキャッシュ・マネジメントをリアルタイムで把握することも可能です。今後とも世界各国の地元銀行同様の使い勝手を追求していきます。