国際世論では、1980年代以降の行き過ぎた自由競争とグローバリズムが資本主義に停滞をもたらしたという見方がコンセンサスとなりつつある。さらに、中国の国家資本主義の成功も自由放任主義への懐疑心を醸成している。2019年のドル円相場は史上最低の変動率を記録したが、2020年中に解消される見通しは立っていない。
(記事内容は2020年1月9日時点)

過去最低を記録した2019年のドル円変動率

J-MONEY論説委員
梅本 徹

2019年のドル円相場に関して特筆すべきは、年間変動率(Fed〈米連邦準備制度〉の公表値を基に算出)が、ドルと金の兌換(だかん)が停止された1971年以来最低を記録したことであろう。

年間変動率は1977年に始まるドル危機時に急激に上昇し、翌1978年には31.1%の歴代最高値を付けた。その後、レーガノミックス(1981年)やプラザ合意(1985年)といったドル政策の変更、日本のバブル景気(1989年)と金融不安(1998年)、米国の不動産バブル崩壊に端を発した国際金融危機(2007~8年)などのリスクイベントごとに変動率は急騰したが、先進国による経済金融政策や国際金融投資の洗練化、セーフティネットの拡充などで年々低下傾向を見せていた。その結果、ついに2019年の変動率は、これまでの史上最低である1972年の6.9%を凌ぐ6.2%まで低下した(図表1)。

その背景として、以下の3つが影響していると筆者は考えている。第1に、Fedと日本銀行間における金融政策の跛は行こう性が解消されたことである。Fedは、2015年12月以降継続してきた利上げを2019年1月に休止し、7月以降は利下げに転じた。一方、日銀は、2019年を通して長短金利操作付き量的質的金融緩和を継続した。

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