「ブレグジット・ローラーコースター」はまだ終わっていない
英国は2020年1月31日、EU(欧州連合)から離脱した。約3年半前の国民投票以降の世論の分断や白熱した議論を考えれば、やや拍子抜けの感があった。ベルギーの首都ブリュッセルにあるEU本部では加盟国旗から英国旗が静かに外された。英国では冷たい雨となったため、離脱祝賀パーティーもそれほど華やかなものとはならなかった。
実際のところ、この日は当然のことながら、英国の完全なEU離脱への中継点でしかなかった。英国はEUから公式に脱退したが、2020年12月31日までと定められている移行期間中、双方は正式離脱前の関係およびEU法の適用を維持することで合意している。英国とEUの2021年1月1日以降の関係がどうなるかは、FTA(自由貿易協定)の交渉の結果を待たねばならない。
その交渉の初会合が2020年3月5日に閉幕した。漁業や司法などを中心に対立構造が浮かび上がった模様だ。いずれの分野も主権がぶつかり合い、両者とも簡単に譲歩できない。記者会見でEU側は「深刻な意見の不一致があると」と述べた。英側は移行期間の延長を申請しない方針を変えていない。
市場からも英・EU交渉の行方について楽観論はほとんど聞こえてこない。英経済調査会社キャピタル・エコノミクスの英国担当チーフエコノミスト、ポール・デールズ氏は、「交渉は難航が予想され、今年の大半が費やされるのは必至だ」としたうえで、その行方について、「本年末に英・EU関係が激変する事態を回避するため、おそらく曖昧な決着になる可能性が最も高い。(市場にとって)上振れサプライズや下振れサプライズは多くの投資家の予想を超えるものとなるだろう」と警告する。
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