J-MONEYカンファレンス「不確実性時代に脚光浴びるヘッジファンドの活用で安定運用を追求」が2024年6月21日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。近年、企業年金をはじめとした機関投資家の間で再び投資意欲が高まっているヘッジファンドについて、その現状分析や活用方法など多角的な講演、パネルディスカッションが行われた。当日のプログラムからパネルディスカッションの内容を紹介する。

日立ハイテク遠藤氏
【パネリスト】
日立ハイテク企業年金基金
常務理事兼運用執行理事
遠藤 健一
NFRC木須氏
【パネリスト】
野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング
フィデューシャリー・マネジメント部
シニアコンサルタント/ソリューショングループリーダー
木須 貴司
阿部氏_パネル
【コーディネーター】
J-MONEY 論説委員
(朝日新聞企業年金基金・前常務理事)
阿部 圭介

安定収益のカギは資産分散。資産構成割合を10区分に細分化

阿部 J-MONEY Onlineで連載している「知りたい!隣の企業年金」で、2023年8月に日立ハイテク企業年金基金を採り上げた。その中で、同基金は剰余金を活用して年金給付を増額するという画期的な取り組みをされていることを紹介した。また、運用資産の基本ポートフォリオの中でヘッジファンドの比率が25%と、日本の企業年金としてはかなり高い割合であることを伺った。

今回は、こうした一連の取り組みを担ってきた遠藤さんにパネルディスカッションの「まな板」に載ってもらい、ヘッジファンドをどう捉えているのかたっぷり語っていただく。

遠藤 日立ハイテクは1947年に「日製産業」として設立された。「日製」というのは日立製作所の略で、日立製作所の子会社の専門商社としてスタートした。2001年に、日立製作所の計測器事業や半導体製造装置事業を承継して、製造販売サービスを一体で行う「日立ハイテクノロジーズ」となった。さらに2020年に日立製作所の100%子会社となり、社名も「日立ハイテク」と短くなった。BtoBの会社で、一般にはあまり知られていないが半導体検査装置や医療系の解析装置などで世界トップシェアの製品がある。

日立ハイテク企業年金基金はグループ7社と1労働組合の8事業所で制度はキャッシュ・バランス・プラン。加入者、受給者、待期者合計で約1万2300人となっている。資産管理の体制で特徴的だと思うのは、四半期ごとの資産運用委員会とは別に、「資産運用ミーティング」を月次で開催している。運用商品の買い付けや解約も月次で決定できる。

阿部 遠藤さんの基金を取材して驚いたのが、政策的資産構成割合(政策アセットミックス)が10区分に細分化されていることだった。

遠藤 【図表1】で政策的資産構成割合と実績値、その乖離幅を示した。当基金も以前は伝統4資産とオルタナティブという分類だったが、オルタナティブの括りが大雑把すぎて、何に投資しているか分からなくってしまう。そこで10区分に変更した。

内外債券の「代替資産」にプライベートデットが含まれているので、それも含めるとオルタナティブ資産は全体の72%ほど。図表最下段に黄色く網掛けをした。また、先ほど阿部さんから「ヘッジファンドが25%」という説明があったが、緑色で示したように現状は4.1%アンダーウエイトになっている。これは、プライベート投資のキャピタルコールが多くかかっていて、これに対応するため流動性のあるヘッジファンドを売ったためだ。プライベート投資からの分配が増えてくれば、これを回してヘッジファンドの比率を元に戻していきたい。

【図表1】日立ハイテク企業年金基金の資産構成割合
日立ハイテク企業年金基金
※クリックすると拡大します
出所:日立ハイテク企業年金基金出

ボラティリティ抑制へ、ヘッジファンド自体も分散

阿部 ところで、遠藤さんにとってヘッジファンドへの投資意義は何か。

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