金利上昇、地政学的リスク、マクロ経済の不確実性などの影響で、一部逆風が吹いているプライベート市場。その一方で、ポートフォリオのさらなる分散とアルファ(超過リターン)の獲得のため、機関投資家のプライベートアセット投資は拡大の一途をたどる。プライベートアセットの近年の動向や投資する上での留意点などを有識者に聞いた。
“1勝1分け2敗”もプライベート投資は拡大基調
ポートフォリオのさらなる分散とアルファの獲得に向け、企業年金基金をはじめとした機関投資家のプライベートアセット投資は拡大の一途をたどる。しかし近年は、高インフレに伴う金利上昇、地政学的リスク、マクロ経済の不確実性などがプライベート市場に逆風となった側面もみられる。
大和ファンド・コンサルティング 年金運用コンサルティング部 シニアコンサルタントの峰佳裕氏は、主要なプライベートアセットの近年の動向について以下のように振り返る。
「最も影響を受けたのは不動産で、評価額が下がるかたちでキャピタルロスが出ているのに加え、とりわけ米国のオフィスセクターは空室率が上昇しており実質的な実力も下落しているように思う。一方インフラは、評価損は出ていないものの、為替ヘッジをかけている場合、ヘッジコストがインカムリターンの過半を相殺している状況だろう。PE(プライベートエクイティ)は、いわゆる『分母効果(デノミネーターエフェクト)』の影響で、新規のファンドレイズ(調達)が遅れるかたちで循環が悪化している印象だ。一方で、そんな中でも企業向け融資のPD(プライベートデット)は拡大基調が続いており、とりわけダイレクトレンディングは相対的にキャピタルロスが少なく、ヘッジコストの高まりも吸収するため人気が出てきている。“1勝1分け2敗” といったところだ」(峰氏)
総じて好調とは言えない市場環境がありながらも、さらなる収益源泉の拡張や伝統的資産との分散を目的に、企業年金基金をはじめとした機関投資家のプライベートアセットへの関心は年々高まっている。この潮流が覆るほどの不振には至っていないと言えよう。
比較的歴史の浅いPD。市場構造の歪みに注意
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