4月景気動向指数・速報値・一致CIは2カ月連続前月差プラス、3カ月後方移動平均前月差は4カ月ぶりプラスを予測。

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

4月速報値の一致CI(コンポジット・インデックス)は前月差プラス0.9程度の上昇と予測する。前月差上昇は2カ月連続だ。

一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の5系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、有効求人倍率の3系列が前月差寄与度マイナスになると予測する。

一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・4月速報値・前月比はマイナス0.1%と、2カ月ぶりの低下だが、小幅な低下となった。全体15業種のうち、生産用機械工業など8業種が上昇、前月の大幅上昇の反動などを受けて、輸送機械工業(除.自動車工業)など7業種が低下という結果になった。

不正検査による一部自動車会社の生産停止という特殊要因が主因で、景気動向指数・一致CIが1月・2月と低下したものの、3月には、工場稼働再開などの影響を受けて改善した。

【図表1】景気動向指数:一致CIの推移
図表1
※2024年4月は筆者予測
出所:内閣府

一致DIは4月75.0%程度と1月~3月の大幅な50割れから改善に

4月の一致DI(ディフュージョン・インデックス)は75.0%程度になり、4カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。4月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がプラス符号になり、有効求人倍率、輸出数量指数の2系列がマイナス符号になると思われる。

2024年1月が11.1%、2月22.2%、3月11.1%と、大幅に景気分岐点の50を下回っていた一時的落ち込みから、戻ったことを示唆していると言えよう。

【図表2】景気動向指数・一致DI
図表2
注:<>内は予測
出所:内閣府
※クリックすると拡大されます。

6月7日公表の4月速報値では景気の基調判断が「下方への局面変化」を維持、「悪化」への下方修正は回避を予測

4月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は3カ月連続「下方への局面変化」の見込みだ。2月~4月にかけて、景気の山が数カ月前だった可能性が高い「下方への局面変化」という判断になった主因は、不正検査による一部自動車会社の生産停止という特殊要因だ。

4月一致CIでは、一致CI前月差がプラス、3カ月後方移動平均前月差もプラス0.77程度とプラスに戻り、「下方への局面変化」継続となる見込みだ。

「悪化」になるという最悪な事態は回避されたようだ。「下方への局面変化」の一段下の「悪化」という判断は、景気後退の可能性が高いことを示す。その条件は、原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスになることだ。製造工業生産予測指数に過去の修正パターンを反映させた経産省の先行き試算値最頻値の90%の確率に収まる範囲の下限は同マイナス2.9%だったこともあり、万一、4月の一致CI前月差が大幅マイナスになった場合、3カ月後方移動平均前月差が4カ月連続マイナスになると、「悪化」に下方修正されてしまうことが懸念されたが、杞憂に終わったようだ。

景気の基調判断が「下方への局面変化」から「改善」に戻るのは、8月7日公表の6月速報値かまたは9月6日公表の7月速報値か

鉱工業生産指数・4月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の5月前月比はプラス6.9%で、経産省の先行き試算値最頻値は同プラス2.3%の見込み、90%の確率に収まる範囲はプラス0.5%~プラス4.1%と上昇の見込みだ。

景気動向指数の景気の基調判断が「改善」に上方修正されるためには、「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇 、かつ当月の前月差の符号がプラス」になることが条件だ。5月速報値段階では、3カ月後方移動平均が2カ月連続上昇 、かつ前月差の符号がプラスとなり、「下方への局面変化」という判断は継続となる可能性が大きいと思われる。

鉱工業生産指数・4月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の6月前月比はマイナス5.6%で、大幅なマイナスが予測されている。3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇 という条件は満たしても、かつ当月の前月差の符号がマイナスになる可能性が出てきた。その場合は、8月7日発表の6月速報分では「改善」は先送りされ「下方への局面変化」の判断継続になってしまう。

8月7日発表の6月速報分では駄目でも、9月6日発表の7月速報分で、4カ月連続して3カ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラスになれば、2014年11月から12月にかけてのように景気判断が「下方への局面変化」から「改善」に上方修正されることになる。

(執筆は2024年5月31日時点)