ESG(環境・社会・企業統治)のGに該当する「人的資本経営」。関連ガイダンスなどをめぐる国内外の動きが活発だ。機関投資家は投資先企業の価値分析や選別にどう活かすか。トレンドや具体的手法を紹介する。

  • 財務データからは見えづらい企業組織の健全性の洞察が得られる
  • 企業の統合報告書や外部機関によるアセスメント情報の活用も有効
  • 海外ではアセットオーナー・グループによる協調的な取り組みも

機関投資家にとって新たな差別化の機会に

BoardHR Initiative (経営人事推進機構)共同設立人 髙橋 恭く 仁に 子こ 氏
BoardHR Initiative
(経営人事推進機構)共同設立人
髙橋 恭仁子

人的資本経営とは一言でいうと、人材を通じて組織の価値を向上させるための一連のマネジメントプロセスであり、経営そのものである。人材戦略と事業戦略を連動させること、企業価値の観点から人材に関わるリスクを軽減させること、リーダー人材のパイプラインを強化することなど、企業価値の観点から一般的な人事管理より広い概念でとらえる必要がある。

一方、人的資本は財務価値のようなデータによる測定が難しい。実際に人的資本それ自体のスタティックな価値の定量化を試みたケースはあるが、財務価値のようなスムーズな相互比較には至らず、そう簡単にはうまくいかない。むしろ、「企業が人的資本のマネジメントをどのようにうまく行っているか」という観点に立ち、それを示す指標に注目していく方法がある。代表例が、エンゲージメントサーベイに代表されるような従業員向けサーベイ結果だ。

人的資本経営は企業の価値創造活動そのものともいえるプロセスで、かつ、測定が困難である。だからこそ、機関投資家にとっては、財務データからは見えづらい企業組織の健全性や差別化に関する洞察を得る機会があることも確かだ。

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