読者アンケートに寄せられたり、編集部が取材する上で耳にしたりした年金運用のお悩みについて、年金運用コンサルタントとして活躍するニッセイ基礎研究所の徳島勝幸氏に尋ねる本コーナー。第5回は読者アンケートでも多くの不安が寄せられた2つのお悩みに回答いただきます。

Q.債券も株式も下落するリスクを踏まえると、何にアロケーションすればよいでしょう?

リスクとは何かの再確認

リスクという言葉について、投資理論で言うものと実生活で意識しているものとが異なります。一般的な投資理論において、リスクは変動(厳密には収益率の変動)であり、上方への変動もリスクとして考えます。

一方で、年金基金など投資家が強く意識するのは「下落リスク」です。運用目的から考えると、投資家が下方リスクを意識することは自然なのですが、コンサルなどとリスクの理解が異なり議論が噛み合わないこともあります。リスクについて相談する時は、意味するところを慎重に確認してください。

運用の目的と目標の再吟味を

年金運用では、バランス型運用やマルチアセット運用を除き、基本ポートフォリオに基づいて各資産クラスの運用をアセットマネジャーに委託します。委託する際に投資ガイドラインで付与される目標は、アクティブ運用の場合は主に市場インデックスであるベンチマーク対比の超過収益獲得であり、パッシブ運用の場合はトラッキングエラーを圧縮したベンチマークへの追随になります。

ここで問題になるのは、目標が予定された運用利回りの確保ではなく、ベンチマーク(≒市場インデックス)に対する超過収益の獲得もしくは追随であることです。すべからく市場インデックスを基準にした運用においては、下方リスクのみを意識しても仕方ありません。

例を挙げるならば、国内株式運用においてバブル経済崩壊の局面で見られたような “TOPIXがマイナス10%のとき、運用実績がマイナス8%だったら、そのアクティブ運用をプラスに評価してよいか”です。超過収益という観点からは、αの獲得をプラスに評価せざるを得ません。しかし、リターンはマイナスです。

他の資産との相関に基づく相殺効果を除いた単独資産での評価では、目標の実現にマイナスの貢献しかありません。それをプラスと評価することが適切でしょうか。

結局のところ、年金運用の目標をどう考えるか、そして、アセットマネジャーに対する運用委託をどのようにするかという問題であり、極端に言えば、目標と手段との間にミスマッチが存在することを意識する必要があります。市場インデックスをベンチマークとした運用のみをアセットマネジャーに委託しているのであれば、株式も債券も下落する局面では、運用結果の責任はアロケーションを行う年金基金が負うしかありません。

資産配分での対応を考える

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