ICI(米国投資信託協会)が設立した業界団体「ICIグローバル」主催のイベントで来日したICIの社長兼CEO(最高経営責任者)のポール・ショット・スティーブンズ氏に、日本におけるDC(確定拠出年金)普及のカギなどを聞いた。(取材日:2015年4月23日)

ポール・ショット・スティーブンズ氏
ICI
社長兼CEO
ポール・ショット・スティーブンズ氏

個人の資産形成手段の1つとして投資信託(ファンド)を活用する動きが世界的に広がっている。世界のファンドの預かり資産額は右肩上がりに伸び、1993年から2014年までの20年間で7倍も拡大した。なかでも米国や欧州の預かり資産額の大きさは際立つ。一方、「豪州や中国、台湾など勢いのある国・地域が集まり、ファンド活用の広がりが見込めるアジア・太平洋地域のポテンシャルは注目に値する」とスティーブンズ氏は話す。

アジア・太平洋地域の一角を占める日本に対する期待も高い。個人金融資産の大半が預貯金として眠っていることが主な理由だ。アベノミクスによる後押しに加え、ファンドを運用、販売する金融機関が自社の利益追求だけでなく、より投資家目線に立ったアプローチを心がけることで、「長らく課題とされてきた『貯蓄から投資へ』の流れをさらに推し進めることができるだろう」とスティーブンズ氏は見ている。

もう1つの世界的なトレンドとしては、少子高齢化などを背景にしたDB(確定給付年金)からDCへのシフトだ。日本の年金制度も同様の状況にあり、スティーブンズ氏は日本の重要課題に「DCへのスムーズな移行」を掲げる。「それには資産形成の必要性を認識してもらわなければならない。とくに若い層の理解向上が大切だ」(スティーブンズ氏)。課題解決策の一例としてNISA(少額投資非課税制度)の投資可能期間を延ばすなど、より長期的な運用に適した制度への見直しで、「資産形成の理解とDCの普及の促進にもつながる」とスティーブンズ氏は話す。

デフレ脱却の兆しが見え始め、投資家心理も改善するなど、ポジティブな投資環境下にある日本。スティーブンズ氏は、「スチュワードシップ・コードの導入やROE(自己資本利益率)重視の傾向などは、投資家にも日本経済にも好ましい動きといえる。こうしたトレンドに対して日本の資産運用会社がいい意味で貢献できることを期待したい」と締めくくった。