知りたい!隣の企業年金・第20回 鹿児島県病院企業年金基金――代議員は全員「ドクター」〜運用責任、執行理事報酬で明確化
今回は総合型、しかも県内70以上の病院が加入する鹿児島県病院企業年金(鹿児島市)を訪ねました。同基金の代議員や資産運用委員は全員医師つまり「ドクター」とのこと。年金資産運用を一手に担う常務理事兼運用執行理事は乙顔 伊久磨(おとがお・いくま)さん。信託銀行を65歳で退職したあと、単身で鹿児島に赴任。71歳の今も年金運用に通暁した知見を生かし、運用責任を明確にして規律と安定性の高い基金運営を標榜されています。
鹿児島県病院企業年金基金の概要
- 所在地/鹿児島市東千石町
- 設立年月/1987年4月に厚生年金、代行返上し2017年11月に企業年金
- 資産総額:71億円
- 加入者数:10,533人
- 受給者数:1,981人
- 予定利率:0.0%(2023年2月に2.0%から変更)
- 期待運用収益率:3.15%(いずれも2023年3月現在)
医師や看護師、事務職員1万人が加入
この連載として初めての「九州上陸」。しかも病院の企業年金基金ということで少々戸惑っています。一から教えていただけますか。
乙顔 当基金は総合型です。鹿児島県内全域の74の病院や関連施設が実施事業所で、医師や看護師、事務職員など現在1万500人ほどが加入しています。
そもそも、こういった病院が集まった企業年金基金がすべての都道府県にあるのでしょうか。
乙顔 かつてはほとんどの都道府県にありましたが、現在は全国で25基金となっています。2000年からのITバブル崩壊や2008年のリーマン・ショック以降、年金資産の運用が厳しくなったことなどで解散するところが続きました。九州でも福岡、長崎、沖縄の病院基金が解散し、現在では鹿児島のほかは熊本、大分、宮崎が残っています。
信託銀行から65歳で転職
乙顔さんは元々、信託銀行におられたのですよね。どういったきっかけでこちらの基金に来られたのですか。
乙顔 三菱UFJ信託銀行の年金運用部で、2008年から南九州地区を担当しました。リーマン・ショックのちょっと前から、株価が大きく下落する兆しが出てきました。当時うまく説明できなかったのですが大変強い予感があったのでショック直前、9月の代議員会に乗り込み、「直ちに保有株式を売却するべきです」と訴えました。その主張に応えてくれたのが鹿児島と熊本の病院基金でした。その時の印象が強かったのかもしれません。当基金の理事長からは「生意気な奴だ」と言われながらも可愛がっていただきました。前任の常務理事がお辞めになるということでお声をかけていただいたのがきっかけです。
しかし、ご自宅は横浜。乙顔さんのキャリアだったら、都内などで勤められるお話もあったのではないですか。
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