ベアリングスのエマージング株式共同責任者のウィリアム・パルマー氏に、エマージング株式市場の現状と今後の見通しについて聞いた。(取材日:2019年3月19日)

ウィリアム・パルマー氏
ベアリングス
エマージング株式共同責任者
ウィリアム・パルマー

新興国株式市場の現状をどう見る。

パルマー 新興国株式市場は2018年末に下落した。ただ、大きく3つあった原因はいずれも解消に向かっている。

1つ目の下落原因は、米金融政策の引き締めに伴うドル高だ。ドルが強くなった影響で新興国から資金が流出したが、最近ではFRB(米連邦準備理事会)の政策がハト派に傾きつつある。この傾向が続けばドル高に歯止めがかかり、新興国通貨の回復、ひいては株式の上昇につながるだろう。

2つ目の原因は、トルコとアルゼンチンの金融危機だ。両国を起点に新興国全体に危機が広がる可能性が危惧されたが、両国政府の利上げ対応により資本流出は抑制されている。加えて、利上げの影響で輸入額が減少し、貿易・経常収支も改善している。

3つ目の原因は、米中貿易摩擦の加速にある。米中どちらの経済にも悪影響をおよぼしかねないとの警戒感があった。現在では交渉が進展しつつあり、今後数カ月のうちに合意にいたる公算が大きい。

中国政府の景気刺激策にも期待が寄せられている。

パルマー 中国政府はすでに、預金準備率の引き下げ、GDP(国内総生産)の1.5%にあたる規模の財政出動、低~中所得者と企業を対象とした減税など、多岐にわたる対策を行っている。現在減速している中国経済の成長率は2020年にかけて再加速し、新興国市場全体に好影響をおよぼすだろう。

新興国株式に投資する際の注意点は。

パルマー 新興国株式は今後数年間で、市場全体をアウトパフォームしていくと見ている。先進国と比較して非効率な市場のため、徹底したリスク管理と再現可能なプロセスを通じ、割安な銘柄を選定することで高リターンが期待できるはずだ。