インタビュー 「機動的なポートフォリオ運用」をキーワードに2024年の荒波に備える
金融政策の転換や様々な地政学的イベントの発生が予想され、様々なシナリオへの分岐点として大きな不確実性を孕む2024年。運用のプロはどのような視点を持って、荒波が想定される同年に向かっているだろうか。ブラックロック・ジャパンでマルチアセット運用を手掛ける地口祐一氏にインタビューを行った(取材は2023年12月6日)。
積極投資への回帰が起きるも、銘柄単位で優勝劣敗が分かれる展開か
2024年のマクロ経済の注目点は。
地口 インフレについては、市場が予想しているほどすぐに低下していくとは限らないとみている。
例えば足元の米国のヘッドラインCPI(消費者物価指数)上昇率のうち、サービス価格の伸び率の寄与度が3%程度となっている。サービス価格は新型コロナウイルス禍前は対前年同月比で毎月1.5%程度でコンスタントに成長しており、コロナショック以前の物価上昇の主要因となっていた。
確かに、コロナ禍からの景気リバウンドやウクライナ危機の影響などで上昇していた企業の製品価格やエネルギー、食品などの価格水準は落ち着いてきたかもしれないが、サービス価格を見ればコンスタントに成長が続いている上、その寄与度が高位に留まっていることは注目に値する。
企業が積極的に値上げをしていることを評価すべきだろう。こと日本においては、過去30年間行われなかった動きが顕在化しているという点で、「構造変化」が起きているともいえる。こうした中で、マーケットやFRB(米連邦準備理事会)は2024年にかけてインフレ率が低下基調となっていく展望を描いているが、そう簡単に下がっていくかは不透明だと考えている。
足元の米国の金利先物市場を見れば、米国のFF金利は2024年の第1四半期で2回以上、利下げをすることが織り込まれている(2024年3月20日現在の金利先物は現在の金利マイナス0.7%)。しかし、インフレの粘着性を考えれば、2024年後半になっても利下げが起こらない可能性もあることに注意すべきだろう。
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