日銀の金融緩和継続の主張、焦点は「中立金利」か
日銀は2023年9月の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定し、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」という政策指針も維持した。もっとも、筆者は日銀がマイナス金利撤回に動く可能性が高まっていると判断しており、その時期を2024年前半とみている。急激な円安など日銀を揺さぶる事象が発生すれば、春闘がある程度見通せるようになる「年内」に日銀が準備運動を開始する可能性にも注意したい。
ここで、そもそも何をもって金融緩和・引き締めというか、考え方を整理しておきたい。
「利上げ」というのは金融政策の方向感に焦点を当てた場合、議論の余地はなく、そのまま金融引き締めである。もっとも、金利の水準感に焦点を当てた場合、利上げをしても政策金利が「中立金利」を下回っていれば、その状態は金融緩和的と言える。
ここでの中立金利とはインフレを加速も減速もさせない金利水準であり、人口動態、生産性、インフレ率などから複合的に計算される。ちなみにFRB(米連邦準備理事会)はそれを2.5%程度と見積もっており、それ以上の状態にある現在の政策金利(5.25~5.50%)を「十分に引き締め的な領域」としている。
では日本の中立金利はどれくらいかというと、日銀からの情報発信はないが、市場参加者の推計値は0 ~ 1%に収まるとみられる。中心値としては0%台半ばであろう(恐らく日銀も同様の推計値を内部で有しているとみられる)。仮に政策金利が0%に引き上げられても、日銀は「中立金利を下回っているので金融緩和的」と表現することは可能だ。
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