【もっと知りたい!債券】シリーズ、いよいよ残すところ後2回となりました。今回のテーマは「為替」です。為替の動向は企業業績や個人の消費性向などあらゆる経済的な局面に大きな影響を与えますが、年金資産運用にとってはどういう意味合いを持つのか。ラッセル・インベストメントの金武伸治さんに、今回も分かりやすく説明していただきます。

株式や債券との違い

株式や債券に関しては、投資や融資のイメージがしやすいですが、為替は明確なイメージを持ちづらいです。どのような考え方で捉えるべきでしょうか。

金武 「為替は単なる交換レートであるため、長期的な期待リターンはゼロ」という考え方をよく聞きます。確かに、株式の配当およびその成長や、債券でいうクーポンのように、為替には収益の源泉となるものが存在しなさそうです。
このため、長期的な収益要因(リターン)にはならない一方、短期的な変動要因(リスク)にはなるというのが一般的な整理でしょう。

しかし為替レートは、やみくもに変動しているわけではなく、何らかの理由や背景があります。そのため、その変動の要因を一定程度説明することができれば、為替の動向を他資産との分散など効果的に活用することができるかも知れません。

為替レート、「金利」と「購買力」の平価で決定

一般的に、為替レートはどのように決定するとされているのでしょうか?

金武 為替レートの決定に関してはいくつかの理論がありますが、古典的な理論として「金利平価説」と「購買力平価説」があります。

はじめに金利平価について説明しましょう。
金利平価とは「為替レートは2つの通貨の金利差を調整するように変化する」という考え方です。厳密には「カバーなし金利平価」と「カバー付き金利平価」という2種類の金利平価があります。

カバーなし金利平価とは、「将来の直物為替レート(スポット・レート)は、その間の内外金利差を調整するように決定される」という考え方です。このため為替ヘッジをしなくても、将来のスポット・レートがその期間の内外金利差分を調整するので、収益は円貨で運用した場合と同じになるというものです。

【図表1】金利平価に基づく為替レートの変化(※イメージ図)
【図表1】金利平価に基づく為替レートの変化(※イメージ図)
※将来の為替レート(1ドル=98円):カバーなし金利平価の場合は直物為替レート(スポット・レート)、カバー付き金利平価の場合は先物(先渡)為替レート(フォワード・レート)
※上記はイメージ図であり、現実を忠実に反映したものとは限らない
出所:ラッセル・インベストメント作成

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