2023年6月2日、ベルサール東京日本橋で「ヘッジファンド戦略の活用が安定運用のネクスト・ノーマルに」をテーマにしたJ-MONEYカンファレンスが開催された。流動性相場の終焉とともに、従来通りの分散投資だけでは十分にリスクを低減することが難しくなっている。そんな運用環境の下、安定運用の次なる土台として注目されるヘッジファンドの運用戦略について語られた当日の講演から、「パネルディスカッション」の概要をお伝えする。

激動時代のヘッジファンド戦略を考える
パネリスト
野手 弘一氏(三井住友銀行企業年金基金)
金武 伸治氏(ラッセル・インベストメント)
コーディネーター
阿部 圭介氏(J-MONEY 論説委員)

年金基金の運用者の経験年数で「温度差」

阿部 ベテラン運用者の野手さんは、投資対象としてヘッジファンドをどう見ているか。

野手 銀行に入ってからの40年のうち、インフレは10年程度で、残り30年はデフレで苦しんだ。ただ、足元のGDP(国内総生産)の数字などを見ると、日本経済は転換点を迎えたと感じる。年金基金は意識を変えて、今こそ日本株への投資を検討してほしい。日本株投資でアルファを狙う戦略として、ヘッジファンドをどう活用するかは大事な視点だと思う。

当基金では2016年度からヘッジファンドに投資している。当初はインフラやプライベートエクイティ(PE)、不動産のファンド・オブ・ファンズ(FOF)だった。FOFはコストが高いと言われるが、結果には満足しているし、各分野の専門家の運用判断は勉強になった。

阿部 コンサルタントの金武さんの目には、日本の企業年金のヘッジファンドに対するスタンスはどう映っているか。

金武 企業年金の運用者の経験年数で向き合い方が異なるようだ。運用者になって5年程度の方は、超金融緩和政策下で銘柄間格差が取りにくくパフォーマンスが振るわなかったヘッジファンドが多かったため、あまり良い印象を持っていない人が多いように感じる。

一方、野手さんのようなベテランは良い局面と悪い局面を両方経験している。伝統的資産とは投資目的や対象資産としての位置づけなどが異なる上、ひと口にヘッジファンドと言っても収益追求型やリスク低減型などで得意な運用環境が異なる点を理解されている。いずれにせよ、伝統的資産の補完や分散狙いなど活用の目的をはっきりさせるのが重要だ。

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