近年、ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した投資が急速に発展、普及してきましたが、足元では2021年に開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)での議論などを受け、資産運用の世界でもパリ協定の目標を意識した取り組みが進んでいます。本連載ではESG投資の中で現在、最も注目を集めている分野の一つである脱炭素投資を巡る様々な議論を紹介、解説していきます。最終回である第6回は、非財務情報開示におけるマテリアリティと投資リターンを巡る論点を紹介します。
シングルマテリアリティとダブルマテリアリティ
マテリアリティとは非財務情報開示において重要性を意味する用語で、シングルマテリアリティとダブルマテリアリティの2つの考え方が存在します。
シングルマテリアリティは財務的な重要性にフォーカスし、ESGや気候変動が企業の財務に与える影響を注視する一方で、ダブルマテリアリティは財務的な重要性に加えて企業が環境や社会に与える影響(環境・社会的な重要性)も考慮する立場を指します(図表1)。
シングルマテリアリティは利用者として投資家を、ダブルマテリアリティはより広範なステークホルダーを想定しています。非財務情報開示においてもこの2つの考え方について統一的な立場があるわけではなく、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)はシングルマテリアリティ、EC(欧州委員会)のNFRD(非財務情報開示指令)はダブルマテリアリティの立場を取っているほか、マテリアリティを動的に捉えるダイナミックマテリアリティという考え方も存在します。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。