【もっと知りたい!債券】も第3回を迎えました。今回は「エマージング債」を採り上げます。発行形態は2種類あり、利回り構成など特性が大きく異なるようです。通常あまり深掘りされませんが、投資をするうえで大変重要な点ですので、ラッセル・インベストメントの金武伸治さんにじっくり解説していただきます。

高い利回りが投資魅力

昨年(2022年)10月に公開した【株式編】第6回で「エマージング株」を採り上げました。その中で、代表的なエマージング債券インデックスが、「エマージング国」の定義として「1人あたりGNI(国民総所得)が一定以下の国」としていることを知りました。そういった、言わば開発途上的な国々の債券に投資する意義は何なのでしょうか。

金武 エマージング債(以下、EM債)の投資魅力、つまり主な投資意義や目的は相対的に高い利回りの享受となるでしょう。

その意味では、前回の第2回で説明した社債投資の主な目的と同じです。社債のリスク源泉は企業クレジット、つまり個別企業の信用リスクであり、EM債のリスク源泉はソブリン・クレジット、つまり個別新興国の信用リスクとなります。このため広義のクレジット債投資におけるリターン源泉の拡張とリスク源泉の分散という投資意義もあります。

発行形態の違い=利回り構造の違い

EM債には「2つの顔」があるとか。

金武 そうです。EM債には「外国通貨建てEM債」と「現地通貨建てEM債」があります。EM債にも国債や社債などが存在しますが、今回は国債をベースにしてお話しします。

【図表1】でイメージを示しました。外国通貨建てEM債とは、新興国が米ドルや欧州ユーロなど外国通貨建てで発行する債券です。このため発行国は外貨を調達し、クーポンや償還元本も同じ外貨となります。

一方で現地通貨建てEM債とは、新興国が自国通貨建てで発行する債券です。例えばブラジルであれば、自国通貨であるブラジル・レアル建てで発行する、といったことになります。

【図表1】外国通貨建て債と現地通貨建て債(※イメージ図)
外国通貨建て債と現地通貨建て債(※イメージ図)
出所:ラッセル・インベストメント作成

この発行形態の違いが、利回り構造の違いにもなるのです。

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