年金資産運用・基礎の基礎 【オルタナティブ編・番外】ヘッジファンド、「出番」はいつ?〜超金融緩和からの脱却で収益機会は拡大も
オルタナティブ運用の多彩な戦略や仕組み、留意点などを7回にわたってご説明してきました。今回は番外編です。オルタナティブの中での「先頭打者」的存在で多くの戦略が存在するヘッジファンドですが、ここしばらくパフォーマンスがいまひとつ。プライベート・エクイティや不動産などに押されている感じです。低迷傾向が続いた背景や今後の見通しなど、ラッセル・インベストメントの金武伸治さんにじっくり伺います。
個別銘柄の「ミスプライス」に照準
ヘッジファンドは戦略の種類が多く、ファンド数も膨大です。しかし今回は、ざっくり「ヘッジファンドはどうやって稼ぐのか」を知りたいです。
金武 確かにヘッジファンドの運用戦略は多種多様です。個別銘柄選択を主軸とするボトムアップ型から、市場方向性を収益源泉とするトップダウン型まで。そして伝統的資産や伝統的手法では追求できないリターン源泉やリスク源泉まで。本当にさまざまな運用戦略が存在します。
こうした多種多様なヘッジファンドの収益構造を簡潔に示すことは難しいです。しかしイメージを持ってもらうために、個別銘柄選択部分にフォーカスして収益機会の捉え方について解説したいと思います。
個別銘柄選択戦略の収益源泉をひとことで言うと「ミスプライス」、つまり価格の歪みです。ある銘柄の本源的価値と比較して、その市場価格が割高であったり、割安であったりするところを捉えようというものです。
ファンドの運用者はミスプライスが発生している時に、割安銘柄の買い(ロング)ポジションや、割高銘柄の売り(ショート)ポジションを構築します。そしてミスプライスが解消して本源的価値に回帰する過程で、ロングしている割安銘柄の価格が上昇、またはショートしている割高銘柄の価格が下落することによってリターンが生まれます。
また個別銘柄選択でリターンをコツコツと蓄積するためには、市場全体の大きな上下動、つまり市場リターンや市場リスクが障害になることもあります。このため同じ株式市場、さらには同じ業種セクターの異なる銘柄を対象にして、ロングとショートを組み合わせる。こうすることで、市場リスクや業種リスクを低減する。こうした中立化をリスク管理として行っています。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。