リスクをコントロールした成長性重視型の投資が重要
続いて登壇したフィデリティ投信シニア・プロダクト・ストラテジストの永井基志氏は、「フィデリティのヨーロッパ不動産源泉投資」をテーマに講演した。日本の投資家が欧州不動産に分散投資する意義について、「ユーロ圏には東京と同程度の市場規模を持つ都市が複数あり、景気サイクルやリスク・リターン特性が異なる傾向にある」点を挙げた。
ファンドの運用では、不動産投資に伴うインカム収益の獲得に重点を置くとともに、クオンツモデルなどの定量分析に加え、株式・債券運用の専門家とのディスカッションにより投資物件を厳選する自社のアプローチを紹介した。ファンドのベンチマークであるMSCIインデックスとの比較について永井氏は、「過去5年間では、英国や北欧、中東、スイスなどへ資金分配しないことで非保有効果を得ている点と、ドイツ、フランス、ベネルクスについてウェイトを上げている点」を強調した。
次に登壇したM&Gインベストメンツ代表取締役兼機関投資家営業統括の城山太郎氏は、「長期安定インカム不動産投資の魅力」について語った。城山氏は、親会社の英国プルデンシャルが1850年代から不動産運用を行っており、「特に、長期で安定したインカム収益が期待できる不動産投資に注力してきた」と、これまでの運用実績を述べた。
不動産ファンドの運用は、優良物件への投資が基本で、リース期間が超長期であることとともに、家賃がインフレ連動の契約になっていることから、家賃は固定率で上昇するか、上方改定のみとなる仕組みになっている点を説明。さらに、年金基金や生命保険会社など、非常に長い期間債務プロファイルの見直しを行う機関投資家において、同社のファンドが負債対応の運用として活用されていると語った。
続いて、アクサ・インベストメント・マネージャーズ機関投資家営業部ディレクターの井部秀高氏が、「アクサ欧州不動産コア戦略」と題して講演した。同社では、不動産市場へ全方位的に向き合い、あらゆる投資機会を獲得する“360度アプローチ”を採用しており、エクイティ、デットともに運用資産残高を積み上げている。
欧州最大級の不動産投資家であるアクサグループは、コア不動産の運用では30年以上の実績がある。2015年には、複数の不動産・投資家を対象とする私募形式の運用プロダクトである「コミングル・ファンド」を設定。外部投資家に対して、アクサグループとの共同投資の機会を提供している。
井部氏は、市場環境を踏まえた「アクサ欧州不動産コア戦略」の3つの取り組みを説明。1つ目は、「立地」にフォーカスし、ダウンサイドリスクを抑えていること。2つ目は、賃料動向を考慮した市場分析により、インカム収益の維持向上に努めていること。3つ目は、相対取引の活用だ。これにより、取引競争の回避を行っていると述べた。
プリンシパル・リアルエステート・インベスターズ最高経営責任者のトッド・エバレット氏は、「米国不動産へのアプローチを考える」と題し、自社のプライベート・デットとコアプラス・エクイティによるリターン向上の取り組みを説明した。
エバレット氏は、足元の不動産市況や景気サイクルに対応する運用手法として、投資対象の選別によりリスクをコントロールした成長性重視型の投資が適していると指摘。同社のプライベート・デットには、「信頼度の高いインカムフロー」「継続的なイールド」「地域の分散」などの特徴が備わっていることを挙げた。
また、コアプラス・エクイティの事例紹介では、「単にコア資産を購入するだけでなく、『開発』という第2フェーズを加えることで、イールドを高めている」と説明した。