プライベート・クレジットにおける認識と投資行動のギャップ―個人富裕層と機関投資家とを分かつもの―
1.はじめに
一頃、個人富裕層・機関投資家の双方から、高い支持を集めてきたプライベート・クレジット(PC)だが、個人富裕層(以下「富裕層」)からの買戻し請求が相次いだことを受け、大手のPC運用機関は買戻し請求の制限を余儀なくされたと報じられている(※1)。これをクレジット危機の兆候と捉える向きもあるようだ。
果たしてそうか? こうした場合、筆者は、「プライベート」という縛りを外し、クレジット市場そのものの状況を確認することとしている(※2)。図表1を見る限り、2025年3月以降、ハイイールドの上載せ金利はむしろ低下基調にあるようだ。とすれば、富裕層向けPCファンドの不振は、クレジット以外の要因に求められる可能性が高い。

※1 富裕層向けPrivate Credit商品では、BDC(Business Development Company)などのビークルが重要な役割を果たしている。また、一定期間ごとに限定的な換金機会を提供するSemi-Liquid型の商品が多く、一般に四半期ごとに純資産の5%程度を上限とする買戻し制限(ゲート条項)が設けられている。足元では、こうした商品の一部で買戻し制限の発動を余儀なくされたと伝えられる。例えば、ブラックストーンのBCRED(Blackstone Private Credit Fund)、ブルー・アウルの関連ビークル、アレス・マネジメントのASIFなどがその例として報じられている。なお、このような仕組みは、低流動性資産を保有するファンドが換金売りを強いられないようにするための安全弁として位置付けられている。
※2 いわゆるファクターリターンの考え方である。プライベートであろうが、パブリックであろうが、取っているリスクは本質的にクレジットであることは変わらないとする考え方だ。この考え方は、近年欧米の保険会社で注目されているCredit Continuumや、先進的な機関投資家の間で導入が進むTotal Portfolio Approach(TPA)にも通じる考え方である。これらについては、いずれ稿を改めて論じてみたい。
2.海外の富裕層向けPCファンドに何が起きているのか?
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