アート・バーゼルとUBSが2026年4月に発行した、2025年の世界のアート市場についての調査レポート『The Art Market 2026』における「Key Findings(要点)」を、J-MONEY編集部が許可を得て編集・抄訳しました。
(翻訳は弊社エディト出版部が2025年4月に発行した「アート投資の王道」の著者 大西知生氏が行いました。)

参考:金融とアートのプロに聞く アート投資を資産形成に!(MonJa〈もんじゃ〉お金と暮らしの情報サイト)

1.世界の市場

1.2025年における世界のアート市場の取引高は成長基調へと回復し、前年比4%増の推定596億ドル(約8兆9,227億円)(※1)となった。これは、2年連続の取引高減少を経ての市場動向における歓迎すべき転換ではあったが、回復は緩やかかつ不均一なものにとどまり、市場規模は2022年のピーク水準を下回ったままであった。

Figure 1.1 Sales in the Global Art Market 2009–2025
Figure 1.1 Sales in the Global Art Market 2009–2025
© Arts Economics (2026)

2.ディーラー(※2)および公開オークション市場の取引高は、いずれも2025年に改善した。公開オークションの取引高は前年比で最も大きな伸びを示し、2024年の急落を経て9%増加した一方、ディーラー部門の伸びは2%にとどまった。対照的に、オークションハウスによるプライベートセール(※3)は5%減少した。これは、公開オークションの取引高が減少し、プライベートセールが増加した2024年のパターンを逆転させるものであった。

3.取引件数は2025年もおおむね安定的に推移し、前年比わずか2%増の4,150万件となった。2024年には、取引高が減少する中でも低価格帯セグメントが取引件数の伸びを牽引していたが、2025年には取引件数全体の伸びはより緩やかとなり、ディーラーの取引件数がわずかに増加した一方、オークションの取引件数はやや減少した。

4.米国、英国、中国の3か国で世界全体の取引高の76%を占め、前年比で横ばいとなった。米国は世界最大のアート市場としての地位を維持し、取引高ベースで世界全体の44%のシェアを占め、前年比1ポイント増となった。英国はシェア18%で横ばいとなり、第2位の市場の地位を維持した。一方、中国は14%のシェアで第3位となった。

Figure 1.3 Global Art Market Share by Value 2025
Figure 1.3 Global Art Market Share by Value 20251
© Arts Economics (2026)

5.米国の取引高は2025年に260億ドルに達し、2年連続の減少を経て前年比5%増加した。2025年は通商政策の先行き不透明感が特徴的な年であったにもかかわらず、高価格帯の取引高は成長基調に回復した。1,000万ドル超でオークション取引されたファインアート作品の合計取引高は、米国において約40%増加した。高価格帯の取引高が市場のプラス基調への回帰を後押しした一方で、取引高は依然として2022年のピーク水準および新型コロナ禍前の2019年の水準を下回った。

6.2025年のトランプ政権に伴う政策の予見しがたさ、とりわけ関税に関するものは、米国および世界のアート取引業界にとって重大な懸念材料となった。米国における主要な取引の一部を支えているアート・骨董品の輸入は、2025年に取引額ベースで13%増の99億ドルとなった一方、輸出は1%減少した。関税がもたらす混乱の一部は、適用除外措置、政策の撤回、および輸入品の先行的な備蓄といった動きによって緩和されたものの、多くのディーラーおよびオークションハウスは、2025年に自社の事業に対する直接的・間接的なマイナスの影響があったと指摘している。

7.英国の取引高は2025年に105億ドルに達し、2024年比で2%増加した。公開オークションの取引高は増加した一方、ディーラーの取引高はより低調に推移し、全体としての成長率は2%の緩やかな伸びにとどまった。取引高の総額は、依然として2019年の水準を下回っている。

8.中国の取引高は横ばいで推移し、1%強増の85億ドルとなった。主に国内志向の強い中国本土市場ではオークションの取引高が上向いた一方、より国際志向の強い香港市場は縮小した。中国以外のアジア市場においても、成長状況はまちまちであった。2024年には減少傾向に逆行していた日本は、2025年には取引高が伸び悩み、前年比1%減少した一方、韓国は6%の増加を記録した。

9.世界第4位の市場であるフランスでは、取引高は45億ドルに達し、前年比9%増となり、取引高水準は2019年をわずかに上回った。欧州のその他の地域における状況はまちまちであり、スイス(13%増)、オーストリア(13%増)、スペイン(6%増)が成長した一方、ドイツ市場およびイタリア市場は減速した(それぞれ10%減、2%減)。

10.2025年、オンライン取引高は92億ドルに減少し、2019年以来の最低水準となった。ディーラーは、デジタルチャネルのみを通じた取引高の割合が大きく低下したと報告しており、オークションハウスにおけるオンライン限定販売は中・低価格帯の作品に集中し、最高価格帯のロットはライブセールで取引された。高価格帯のオフライン取引が勢いを取り戻したことに伴い、オンライン限定販売の割合は前年比3ポイント減の、アート市場全体の取引高の15%となった。これは2020年のピークの25%から10ポイントの減少であるが、新型コロナ禍前の2019年の水準である9%を依然として上回っている。

2.ディーラー

1.ディーラー部門の取引高は2025年にプラス基調に転じ、世界全体で2%増の推定348億ドルとなった。これは2年連続の減少を経てのより安定した結果を示すものであったが、地域やセグメントによる成長状況のばらつきは依然として続いた。

2.市場の低価格帯における成長が引き続き最も力強く、年間取引高50万ドル未満のディーラーでは、平均取引高が2桁の伸びを記録した。年間取引高100万ドルから1,000万ドルのディーラーの取引高は停滞したが、市場の最上位層である年間取引高1,000万ドル超のディーラーは、2年連続の減少を経て3%増加した。

3.2025年には、評価が確立されたアーティストおよびより古いセクターへの構造的な再配分がより明確となった。超現代アート作品(ultra-Contemporary art)*4がコロナ禍後の回復の多くを牽引していた一方、現代アート作品のディーラーによる取引高は2025年には停滞した。より古いセクターおよびセカンダリーマーケットのセクターの方が好調に推移しており、根強いリスク回避姿勢を背景に、高価格帯の取引が新進アーティストではなく、市場の中でも最も評価が確立された分野に集中する傾向が続いた。

4.全ディーラーのうち、42%が取引高の増加を報告し(2024年比7ポイント増)、33%が減少、25%が横ばいと回答した。取引高増加を報告した割合は、すべての取引高規模区分において上昇し、小規模ディーラーではごく緩やかな伸びにとどまった一方、市場最上位層では大きな変化が見られた。年間取引高1,000万ドル超のディーラーのうち、取引高が改善したと回答した割合は48%となった(2024年の23%から上昇)。

5.運営コストの上昇は、2025年に最も頻繁に挙げられた課題の一つであった。コスト上昇が最も大きかったのは、梱包・輸送・物流費(10%)、アートフェア関連費用(9%)、出張・宿泊費(6%)であった。運営コスト全体は平均で推定5%上昇し、これは主要市場の大半におけるインフレ率、および取引高全体の成長率をいずれも上回っており、市場の一部が依然として大きな圧力下にあることを示している。

6.取引高がプラス成長へ回帰したことは、一部のディーラーにとって利益率の安定に寄与した。2025年には、38%が収益性の低下を報告し(前年比5ポイント減)、33%が収益性の向上を報告、29%はおおむね横ばいであった。収益性の改善が最も顕著だったのは高価格帯層であり、年間取引高1,000万ドル超のディーラーの43%が利益の増加を報告した。しかし、中間層の状況はそれほど良好ではなかった。年間取引高25万ドルから50万ドルのセグメントでは、取引高が増加したにもかかわらず、収益性の向上を報告した割合は30%に低下し、利益率の低下を報告した割合は45%に上昇した。

7.ディーラー部門は、引き続き事業としての相当な持続性を維持した。2025年には著名なギャラリーの閉鎖が話題となったものの、閉鎖が新規開業を上回ったことを示す証拠は見られなかった。公表されているギャラリーの活動状況を分析したところ、新規開業の割合(42%)は閉鎖の割合(25%)を大きく上回っており、残りは移転・規模縮小・拡張を反映したものであった。これは、この部門内で大幅な再編と流動が生じていることを示している。

Figure 2.4 Gallery Restructuring Based on Media Announcements 2025
Gallery Restructuring Based on Media Announcements 2025
© Arts Economics (2026)

8.ディーラー1社あたりの平均買い手数は2025年に57人へ減少し、2021年以来の最低水準となった。最も大きな減少が見られたのは最小規模のディーラーであり、年間取引高25万ドル未満のディーラーでは平均買い手数が40%減の29人となり、2021年以来の最低水準となった。平均買い手数はディーラーの取引高規模が大きくなるにつれて増加し、年間取引高1,000万ドル超の事業者では買い手数125人となり、前年比40%増となったものの、2023年のピーク(163人)は下回った。

9.2025年には女性アーティストの取り扱いが引き続き強まり、プライマリーマーケットのギャラリーにおいては男女比が均衡する水準に達した。全ディーラーを通じてみると、女性アーティストは取り扱いアーティストの45%を占めた(前年比4ポイント増、2018年の35%から上昇)。商業的な成果における進展はより緩やかであったが、さらなる前進が見られ、女性アーティストは取引高ベースで取引高全体の37%を占めた(前年比2ポイント増、2018年の28%から上昇)。この改善はプライマリーマーケットのギャラリーによってのみ牽引されたものであり、同ギャラリーにおいては女性アーティストが取引高の44%を生み出した。

Figure 2.20 Female Artist Representation and Sales, Selected Years 2018–2025
Figure 2.20 Female Artist Representation and Sales, Selected Years 2018–2025

b) Share of Total Sales by Female Artists
© Arts Economics (2026)

10.2025年に女性アーティストをめぐる進展が見られたにもかかわらず、小規模ディーラーと大規模ディーラーの間には格差が残った。年間取引高25万ドル未満のディーラーでは、女性アーティストが取り扱いアーティストの55%、取引高ベースで43%を占めた。これらの比率は取引高規模が大きくなるにつれて低下し、年間取引高1,000万ドル超のギャラリーでは、取り扱いアーティストの35%、取引高の27%にとどまった。この傾向は、市場の低価格帯における参入と多様性は改善している一方で、最も商業的な成功を収めた層にまで到達する女性アーティストは依然として比較的少数であることを示唆している。

11.アートフェア経由の取引高はディーラー取引高全体の35%まで増加し(前年比4ポイント増)、2022年以来の最高水準となった。この成長は海外フェアと国内(地元)フェアの双方によって同等に牽引され、中規模ディーラーにおいてアートフェア経由取引高比率の伸びが最も大きかった。最上位層のディーラー(年間取引高1,000万ドル超)を除くすべての区分において、アートフェア経由取引高比率は上昇した。この最上位層の比率は平均32%で、前年比2ポイント減となった。成果が改善したにもかかわらず、参加コストは同年を通じてディーラーにとって上位に位置する課題の一つであり続けた。

12. オンライン取引高は2025年にディーラー取引高全体の16%に低下し、前年比6ポイント減となったが、これは高価格帯の取引が引き続き対面チャネルへと回帰する動きを反映したものであった。ディーラー自身のウェブサイトやデジタルプラットフォームを通じた取引高は、取引高全体の14%を占め、3ポイント減少し、2023年のピークである20%から2年連続の減少となった。この縮小にもかかわらず、オンライン取引高は新型コロナ禍前の2019年の水準である8%を依然として大きく上回っている。ディーラーはまた、2025年のオンライン取引高のうち、金額ベースで40%が新規買い手によるものであったと報告している。

13. ディーラーの半数超(56%)が、関税が自社の事業に負の影響を及ぼしたと報告した(一方、プラスの影響を挙げたのは1%にとどまった)。負の影響を報告した回答者のうち、72%が輸送費や保険料といった付随コストの上昇を挙げ、65%が海外販売時の関税・税金負担の増加という直接的なコストを指摘した。半数を超える回答者はまた、事務負担および手続きの複雑化の増大に加え、国際的な購入を躊躇させる価格の不確実性の高まりも挙げた。

14. 国境を越える取引に伴う複雑さおよびコストの増大は、国内買い手と海外買い手の間での取引高の配分を変化させた。2025年には、すべてのディーラー区分において、個人コレクターへの販売が国内コレクターへとシフトし、特に最小規模のディーラーにおいてこの傾向が顕著であった。同区分では、国内コレクターへの販売比率が9ポイント上昇し、個人コレクターへの取引高の71%に達した。海外コレクターが依然として主流を占める年間取引高1,000万ドル超のディーラーにおいても、国内買い手への販売比率は29%まで上昇し、前年比6ポイント増となった。

3.オークションハウス

Figure 3.1 Global Auction Sales 2019–2025
Figure 3.1 Global Auction Sales 2019–2025
© Arts Economics (2026) with data from auction houses, Winston Artory Group, and other sources.

1.オークション市場の取引高は2025年に成長基調へと回復し、公開オークションとプライベートセールを合わせた取引高は6%増の248億ドルとなった。これは、2年連続の取引高減少と長期にわたるこの部門の不安定な状況を経ての、市場における転換点であった。公開オークションの取引高は9%増の207億ドルとなり、下半期における取引活発化と、市場の高価格帯における複数の記録的な価格がこれを牽引した。対照的に、プライベートセールの取引高は5%減少し、42億ドルをわずかに下回る水準となった。

2.2024年には市場の低価格帯が取引件数を押し上げていたが、2025年にはオークション取引件数が全体として減少し(1%減)、落札されたファインアート作品のロット数は2%減少した。

3.公開オークションの取引高は2025年も引き続き、その大半が世界最大の3つの市場に集中しており、米国、中国、英国の合計シェアは72%となり、前年比2ポイント増となった。米国はその首位の座をさらに強め、取引高ベースのシェアは3ポイント上昇して34%となった。2023年にロックダウン後の急伸を受けて一時的に米国と肩を並べた中国は、後退を続けており、2024年にシェアを6ポイント失った後、2025年にはさらに1ポイント失い、24%となった。英国は14%で再び第3位となった。

4.米国の公開オークション取引高は、2年連続の減少を経て2025年に急反発し、前年比20%増の70億ドル強となった。これは、下半期にニューヨークで取引された極めて高価格な作品によって支えられたものであった。米国における高価格帯への集中はさらに強まり、取引高上位10作品はすべてニューヨークで落札され、上位50作品のうち39作品もニューヨークで落札された。ファインアートオークションにおける世界の1,000万ドル超セグメントでの米国の優位は一段と強まり、そのシェアは78%(2024年の73%から上昇)となった。また、米国は世界全体で1,000万ドル超で落札されたファインアート作品の総取引高のうち61%を占めた。

5.2025年、中国のオークション市場は堅調さを増したが、その動向は地域によって分かれた。より国内志向の強い中国本土のオークションハウスは全体として好調な結果を記録し、取引高は米ドルベースで約6%増加した。対照的に、より国際志向の強い香港の業者では取引高が5%減少した。この結果、中国全体としての成長は緩やかなものにとどまり、総取引高は2%強増の49億ドルとなった。

6.運営コストの上昇は、オークション部門における重要な課題として挙げられた。中堅オークションハウスの平均運営コストは前年比5%上昇し、ディーラー部門と同様の傾向を示した。しかし、取引高の伸びのばらつきは、黒字企業と赤字企業との間の格差を広げた。利益が増加したと回答した割合は29%(前年比4ポイント増)であった一方、より大きな割合である40%が年間利益の減少を報告した(前年比2ポイント増)。関税および貿易障壁は利益率にさらなる圧力を加えており、80%が関税および越境取引の障壁が2025年の自社事業に負の影響を与えたと回答し、20%は影響がなかったと回答した。プラスの影響があったと回答した企業はなかった。

7.下半期における主要コレクションの売却に牽引され、2025年の成長は市場の最上位層に集中した。100万ドル超で落札されたファインアート作品の取引高は前年比21%増加し、取引件数は15%増加した。超高価格帯では、1,000万ドル超の取引高が30%増加し、落札件数は9%増加した。対照的に、5万ドル未満の取引高は減少し、取引高・取引件数ともに2%の減少となった。この年間での上昇にもかかわらず、100万ドル超セグメントの取引高は依然として新型コロナ禍前の2019年の水準を下回っている。

8.戦後・現代アート(Postwar and Contemporary)を合わせたカテゴリー*5は、2025年もファインアートオークション市場最大のセクターであり続けた。しかし、世界の取引高に占めるそのシェアは6ポイント低下し、45%となった。同セクターの総取引高は45億ドルに達し、前年比2%減少した。これは、コロナ禍後の取引高ブームによってピークに達した2021年の85億ドルから、4年連続の取引高減少となる。現代アート(Contemporary)の取引高は前年比横ばいの14億ドルであった一方、戦後アート(Postwar)の取引高は3%減の31億ドルとなり、いずれも新型コロナ禍前の2019年の水準を下回っている。

9.近代アート(Modern)は、2025年のファインアートオークション市場において第2位のセクターであり、取引高ベースのシェアは24%で安定して推移した。2025年、近代アートの取引高は9%増の24億ドルとなり、過去3年間続いていた減少傾向が反転した。同セクターにおける最高額のロットは女性アーティストによる作品であり、フリーダ・カーロの「El Sueño (La Cama)」(1940年)はニューヨーク、サザビーズにて5,470万ドルで落札された。これは、オークションにおける女性アーティストの落札額としての記録である。

10.印象派・ポスト印象派(Impressionist and Post-Impressionist)の取引高シェアは2025年に5ポイント上昇し、世界のファインアートオークション取引高の19%となった。同セクターは最も好調なパフォーマンスを示し、取引高は前年比47%増の18億ドルとなった。この成長は、その年の取引高上位10作品のうち6作品を含む、複数の突出した取引によって押し上げられた。中でも最も注目されたのは、グスタフ・クリムトの「Bildnis Elisabeth Lederer(Elisabeth Ledererの肖像)」(1914-1916年)であり、ニューヨーク、サザビーズにて2億3,600万ドルで落札された。これはその年で群を抜いて最高額であり、オークション史上第2位の落札額でもある。

11.オールドマスター(Old Masters)セクターの取引高は2025年に12億ドル弱に達し、前年比30%増加した。ヨーロッパ・オールドマスター(European Old Masters)は2年連続の減少を経て力強い回復を見せ、落札件数が6%減少したにもかかわらず、取引高は38%増の5億3,500万ドルとなった。この成長は高額取引の増加によって牽引されたものであり、100万ドル超で落札された作品は80点となった(2024年の37点と比較)。その中には極めて高額な取引もいくつか含まれていた。最も注目されたのは、カナレットの「Venice, the Return of the Bucintoro on Ascension Day」(1732年頃)であり、ロンドン、クリスティーズにて4,390万ドルで落札された。これは同アーティストにとっての記録額であり、2025年のオークションにおける落札額上位20位以内に入る取引でもあった。

Figure 3.16 Market Share by Fine Art Auction Sector 2025

Figure 3.16 Market Share by Fine Art Auction Sector 2025

Figure 3.16 Market Share by Fine Art Auction Sector 2025
© Arts Economics (2026) with data from Winston Artory Group

4.今後の見通し

1. 2026年に向けて、アート市場における楽観論は強まり、12か月前の調査時点と比べて、今後より好調な1年を見込む事業者が増加した。2024年末時点でディーラー部門における信頼感はコロナ禍以降で最低水準にあったが、2025年末までに回復した。全体として、ディーラーのうち43%が取引高の改善を見込んでおり(前年比10ポイント増)、38%が取引高の横ばいを見込み(同10ポイント減)、19%が取引高の減少を見込んでおり、この割合は横ばいであった。

2. オークション部門においても、2025年に見通しは改善した。厳しい1年を経た2024年末時点では、中堅オークションハウスのうち取引高の改善を見込んでいたのはわずか15%であった。2025年末までに、この割合は48%まで上昇した。一方、21%が業績の悪化を見込んでいたが、これは前年の40%から大幅に低下した水準であった。

3. 2025年における取引高の回復にもかかわらず、ディーラーは依然として、とりわけコストの上昇や国境を越える取引の複雑化の増大といった、大きな事業上の圧力に直面し続けた。ディーラーにとって最も頻繁に挙げられた課題は、引き続き政治的・経済的な不安定さおよびそれが需要に及ぼす影響であった。第2位の懸念事項は、過去2年間と同様、既存コレクターとの関係維持であり、既存コレクターは買い手数の51%、取引高ベースで62%を占めた。アートフェアへの出張・参加コストが第3位となり、これに僅差で、報告された課題の中で前年比の増加幅が最も大きかった諸経費・運営コストが続いた。

4. 中堅オークションハウスにとって、2025年における最も切迫した懸念は政治的・経済的な不安定さであった。運営コストおよび諸経費が第2位となり、これを挙げた回答者の割合は過去数年と比べて顕著に高く、この部門における圧力の高まりを裏付けるものであった。オンライン取引高の拡大という課題は、事務負担および規制対応の複雑化と並んで同率第3位となった。しかし、5年先の見通しにおいてはオンライン取引高に関する懸念が薄れる一方、事務・規制面での圧力は強まっている。

【訳者による脚注】
※1 三菱UFJ銀行公示のドル/円TTM相場の年間平均149.71から換算。
※2 本レポートでは、画廊・ギャラリー、美術商、オンライン販売業者などを指す。
※3 オークションハウスが個別に売り手と買い手をマッチングし非公開で作品を売買すること。
※4 本レポートでは、取引から20年以内に制作された作品を超現代アート(ultra-Contemporary art)としている。(P.190より)
※5 本レポートではアーティストのカテゴリーを以下のように分類している。(P.177より)
・現代(Contemporary):1945年以降に生まれたアーティスト
・戦後(Post-War):1910~1945年の間に生まれたアーティスト
・近代(Modern):1875~1910年の間に生まれたアーティスト
・印象派およびポスト印象派(Impressionist and Post-Impressionist,):1821~1874年の間に生まれたアーティスト
・オールドマスター(Old Masters):1250~1821年の間に生まれたアーティスト

翻訳者 プロフィール

アートアドバイザー/資産運用ストラテジスト 大西知生 さん 経済学博士

大西知生
独立の立場で、国内アートオークション会社のアドバイザー、資産運用会社のエグゼクティブ・コンサルタント、アート投資ファンドの投資委員等を務める。アートを資産クラスとして扱う定量的アプローチで、企業やコレクター向けのアドバイザリーを行う。自らも年間数十点のアート作品を購入するコレクター。
もとは金融のプロフェッショナルとして、慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)、J.P.モルガン等に勤務。ドイツ銀行グループ在籍時はマネージングディレクターとしてチームを率い2005年から2013年まで9年連続で外国為替取引マーケットシェア世界1位(英Euromoney誌)を獲得。個人としてもテクニカル分析でディーラー・ランキングにおいて6度の1位(J-Money誌)に輝いた。
国際アート市場研究学会(TIAMSA)、国際浮世絵学会、文化経済学会、日本金融学会所属。
著書は他に『The Royal Road to Art Investment(英文出版)』 エディト出版部、『FX取引の王道 外貨資産運用のセオリー』 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版)がある。