円安の影響を大きく受ける日本銀行の金融政策
消費者物価は政府のエネルギー補助金政策の影響を受ける
総務省は2024年12月20日に11月分全国消費者物価指数を発表した。コアCPI(除く生鮮食品)は、前年同月比+2.7%と前月の同+2.3%を上回り、3か月ぶりの上昇となった。ただしこれは、政府による電気・ガス代補助金を10月使用分で終了したことの影響によるところが大きく、事前に予想されていたことだ。
他方でこうした政策によるエネルギー価格の変動の影響を受けない基調的な物価動向を見ると、比較的安定した状態にある。食料(酒類を除く)、エネルギーを除くCPIは、11月に前年同月比+1.7%と10月の同+1.6%から僅かに上昇したものの、物価目標の2%を下回る水準を維持している(図表)。
日本銀行は、輸入物価上昇による物価押し上げ効果は減衰している一方、賃金上昇がサービス価格に転嫁されることで、基調的なインフレ率は高まっていき、2%の物価目標が達成されると説明している。
しかし、11月のサービス価格は前年同月比+1.5%と10月と同水準だった。また持ち家の帰属家賃を除くサービスは11月に+2.1%と10月の+2.2%から低下している。
輸入物価の変化が、遅れてコアCPI、そして食料(酒類を除く)、エネルギーを除くCPIへと波及する姿が顕著に見られる。賃金上昇もこうした輸入物価上昇の波及プロセスの一環であり、それ自体が新たな物価上昇のけん引役になる訳ではないと考えられる。
この先、円安の流れが続けば、コアCPIは2%台の上昇率が維持されることになる一方、円安の流れが止まれば、1%あるいはそれ以下まで緩やかに低下していくと予想する。為替の動向が物価の動向に大きく影響するのである。
日本銀行の利上げ後ずれ観測で1ドル158円近傍まで円安が進む
2024年12月18日にFRB(米連邦準備制度理事会)は0.25%の利下げを決めたが、来年(2025年)の利下げのペースが顕著に鈍化するとの見通しを示した。他方で日本銀行は12月19日の金融政策決定会合で追加利上げを見送った。さらにその後の記者会見で植田総裁は、来年の春闘に向けたモメンタムとトランプ次期政権の追加関税策について、もう少し情報を得たいと説明した。ともにすぐに全容は明らかにならないものであることから、金融市場では次回2025年1月の決定会合でも追加利上げが見送られる、との観測が生じている。
植田総裁の発言は予想よりもハト派的であったが、FRBの利下げ観測が後退する中でそのような発言をすれば円安が進むことは容易に想像できた。実際そうした発言がなされたことで円安が進み、20日の東京市場では、ドル円レートは一時1ドル158円に接近した。
日本銀行は円安によって1月利上げに追い込まれる可能性
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