マクロ経済 政治的不安定性がリフレを進める。財政拡張と賃上げへの機運が高まる
ポピュリスト的な政策の可能性
2024年10月の衆議院議員選挙で与党が多くの議席を失ったことで、日本の政治的不透明感は高まった。自民・公明両党で過半数の議席を確保できなかったことで、これまで野党勢力だった党の掲げる政策の実現可能性は高まっている。
2025年7月には参議院議員選挙が予定されていることで、政権は有権者の支持獲得に向けて、ポピュリスト的な政策を打ち出す可能性も高まっている。
こうした中で生じてくるだろうことは財政拡大と賃上げモメンタムのさらなる加速だ。財政拡大に関しては、これがエネルギー補助金の一時的延長などに限られる場合、2025年に予想されていた財政引き締めの規模がわずかに縮小する程度にとどまり、経済への影響はさほど大きくはならないだろう。
しかし、大規模な減税などが実施されるのであれば、財政政策は2025年度も景気刺激的に維持される可能性が高い。さらにリフレが恒久的な政策にまで及んだ場合には、2025年にかけて国内需要は一層押し上げられるだろう一方で、先々の財政安定性への懸念は高まりかねない。
政府は既に、2022年に決定した防衛費増額の裏付けとなる財源確保の取り組みを延期し続けているうえ、先々は金利上昇にともなって政府債務の利払い費の増加も想定される。こうした中で、大規模な恒久減税が行われれば、市場はこれを懸念材料として受け止めるだろう。
国債市場の機能度が依然として低く、長期金利の上昇余地が限られるのであれば、この懸念は円安圧力として為替市場に向かいかねない。
賃上げ促進に関しては、すべての主要政党が重要な政策課題として掲げている。政府は、企業の賃金設定に直接的に関与はできないものの、最低賃金の引き上げやそのための価格転嫁を促進する取り組みが強まる可能性は高い。これは、既に1990年代前半以来の水準まで高まってきている賃金上昇率を一層押し上げる方向に作用するだろう。
日銀への影響はマクロ環境次第
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