日銀短観の業況判断DIは、他の景況感に関する調査のように方向性ではなく、水準についてのデータである点に注意が必要。

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

10月1日に金融市場注目の経済指標、日銀短観24年9月調査が発表される。

予測値として最も注目されるデータは大企業・製造業・業況判断DIと大企業・非製造業・業況判断DIである。日銀短観の業況判断DIは他の景況感に関する調査のように方向性ではなく、水準について質問しているので、データを読むときに注意が必要だ。すなわち、日銀短観以外の調査では、景況感について「良くなる」・「悪くなる」、あるいは「上昇」・「下降」という方向性に関する質問をしている。

一方、日銀短観の業況判断は「良い」、「さほど良くない」、「悪い」という3つの選択肢の中から1つを回答してもらい、「良い」の回答社数構成比から「悪い」の構成比を引いてDIを算出する。プラスのDIは「良い」超であることを意味する。

日銀短観9月調査、大企業・製造業・業況判断DI+13程度、大企業・非製造業・業況判断DI+28程度か。

日銀短観9月調査では、大企業・製造業の業況判断DIは+13程度と6月調査+13から横這いになると予測する。トヨタ自動車の型式認証不正問題により、自動車はもたつくとみた。

また、大企業・非製造業の業況判断DIは+28程度と、こちらは6月調査の+33から5ポイント程度低下し、2期連続悪化すると予測する。好調なインバウンドはプラスに寄与すると思われるが、宮崎県の地震や南海トラフ地震臨時情報の発表、猛暑や台風の上陸などの自然現象が、宿泊・飲食サービスなどの景況感にマイナスに働くとみた。

大企業・製造業・業況判断DIと相関性がある7~9月期の鉱工業生産指数の前期比は概ね横這いの見通し。

2018年から2024年上半期の26四半期のデータで、鉱工業生産指数と日銀短観・大企業・製造業・業況判断DIの相関係数を計算すると0.66とそれなりの相関があることがわかる。鉱工業生産指数は既に7月速報値が発表されているので、8月・9月を製造工業予測指数の前月比(+2.2%、▲3.3%)で延長するケースと、8月を経産省が試算した先行き補正値・最頻値の前月比(▲0.9%)、9月を製造工業予測指数前月比(▲3.3%)で延長するケースで、7~9月期の鉱工業生産指数の前期比を試算することができる。

前者は+1.4%の上昇、後者は▲0.6%の低下で、概ね横ばい圏の見通しと言える。これは9月調査日銀短観で、大企業・製造業の業況判断DIは+13程度と6月調査から横這いになると予測することと、整合的である。

日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(9月調査)やロイター短観(9月調査)の動向。

■日銀短観とロイター短観(400社ベース)、QUICK短観(大企業)の業況判断DI比較
出所:日本銀行、トムソン・ロイター、QUICK
※2024年9月調査の日銀短観・業況判断DIは筆者予測値
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9月10日に発表されたQUICK短観9月調査の調査期間は8月27日~9月5日である。9月の製造業の業況判断DIは6月の+21から横這いの+21となった。また、9月の非製造業の業況判断DIは+24と、こちらは6月の+30から6ポイント悪化した。

9月11日に発表されたロイター短観6月調査の調査期間は8月28日~9月6日である。9月の400社ベースの製造業の業況判断DIは6月の+6から2ポイント悪化し+4になった。また、9月の200社ベースの製造業の業況判断DIは6月調査の+19から横這いの+19になった。

9月のロイター短観400社ベースの非製造業の業況判断DIは6月調査の+31から8ポイント低下し+23になった。一方、9月の200社ベース・非製造業の業況判断DIは6月調査の+26から2ポイント低下し+24になった。

<9月調査日銀短観・大企業・予測値>
9月製造業DI   +13
9月非製造業DI  +28
12月製造業DI   +12
12月非製造業DI  +29