為替 ドル円上昇の背景と目標値。やはり日米の実質金利差がカギ
円安反転には米インフレ抑制が必須
2024年4月末から5月初旬にかけて、ドル円で覆面介入と思しき動きが見られた。ドル円が160円台を付ける場面ではボラティリティも上昇。シカゴ通貨先物市場IMMの投機筋による円の持ち高も過去最大に迫っていた。加えて日本の大型連休で薄商いだったこともあり、介入に踏み切るには絶好の機会であったと言えよう。
とはいえ、ドル円の上昇トレンドが反転するには、米国のインフレ抑制が必須だ。2022年の円買い介入の際にも、ドル円相場が本格的に下落トレンドに転じたのは同年11月の所謂「逆CPIショック」がきっかけだった。2024年のドル円相場は、年初来上昇トレンドを描いているが、米国の予想外に堅調な経済と、米利下げ観測の後退が主たる背景であったことを踏まえれば、米利下げが確実視されるような環境になって初めて、為替相場もドル安・円高への転換点を迎えることになるだろう。
一方、円安の背景としてよく挙げられるものとして、日本の貿易赤字や新NISA(少額投資非課税制度)による外貨投資の増加などがあるが、長期的には重要な観点であっても、2022年5月にドル円が130円を突き抜け、その後極端な円安トレンドが続いている理由としてはやや弱い。日本の貿易赤字(季節調整値)は同年10月に2兆円のピークに達してから減少しているが、この間円安の勢いはむしろ増している。
今年は新NISAで海外資産への投資が増加しているのも確かだが、年間で最大3.9兆円の外貨需要が発生するとの試算(日経新聞の報道による)に基づけば、1日平均2.1兆ドル(約320兆円)のスポット取引が行われている外為市場の規模感からして、やはり足下の円急落を説明するには不十分ではないか。
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