円安レジームの転換と勃興する新たな為替リスク キャリートレード主導相場は長続きせず。ドル円は購買力平価に従い大量巻き返しか
ドル円相場の急速な円安進行に揺れた2022年が過ぎ去った。今後のドル円相場は、米国の金利低下観測と貿易収支改善のはざまで、当面、堅調に推移すると予想される。しかし2023年末までに、新興経済国発の世界的な金融不安が勃発すれば、円キャリートレードの大量巻き返しが誘発され、ドル円相場は大幅に下落する公算が高い。
(記事内容は2022年12月6日時点)
円キャリートレードと為替介入が
主導した2022年主要為替相場
2022年の主要為替相場は、内外の金利差に着目したキャリートレードに主導された円独歩安の展開となった。年初、対ドル115円台、対ユーロ130円台、対ポンド155円台で始まった円相場は、同年3月以降、ドルが先導するかたちで円安が進展した。
2022年10月には、ドル円相場が151円台、ユーロ円相場が148円台、ポンド円相場が172円台と、それぞれ年間最高値まで上昇した。ピークまでの同年初来の上昇率は、ドル円が30.0%、ユーロ円が13.1%、ポンド円が10.2%と、ドル円が、その他を大きく凌駕している。同年11月以降は、為替介入と米利上げペースの減速観測から円相場は反発し、同年12月初めの同上昇率は、それぞれ、17.0%、9.1%、6.8%まで低下した(図表1)。
円安の最大の背景は、わが国を除く主要国におけるインフレの進展と政策金利の引き上げであった。2021年1月に各国とも1.4%であった米国、EU(欧州連合)、英国のコアCPI(食品・エネルギーを除く消費者物価、前年比)は、同年中に新型コロナウイルスのパンデミック終了による景気回復などにより、やはり米国が先行するかたちで上昇が始まり、同年末には、それぞれ、5.5%、2.7%、4.2%となった。
2022年に入ると、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰から、インフレ圧力は一層強まり、各国のコアCPI は、米国が6.6%(9月)、EU が6.6 %(11月)、英国が6.5%(9、10月)まで続騰した。
一方、わが国(東京都区部)のコアCPI は、2021年4月から2022年3月までマイナス圏で推移したのち上昇に転じたものの、同年10、11月に1.2%にとどまっている。
欧州中銀は一斉に金融引き締め
英ポンドはトラス・ショックの逆風
インフレの高進を受けて、日本を除く主要国の中央銀行は、2021年12月より利上げによる金融引き締めを実施した。Fed(米連邦準備制度)は、2022年3月に0.25%の利上げによって、パンデミック発生以降継続してきたゼロ金利政策を解除し、同年5月に0.5%の利上げ、同年6月から11月には0.75%の利上げを4回連続して断行、政策金利は3.75~4.00%まで引き上げられた。
ECB(欧州中央銀行)は、2022年7月に0.5%の利上げによってマイナス金利政策を解除し、同年9月と10月に0.75%の利上げを連続して行い、政策金利は、1.50%まで引き上げられた。
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