米中貿易戦争が続く中、中国株投資の先行きはどうなるのか――。コムジェスト・グループでアジア株式などのアナリスト兼ポートフォリオマネージャーを務めるデイビッド・レイパー氏とジャスミン・カン氏に、中国株式の魅力や同社の運用の強みなどを聞いた。(取材日:2019年10月24日)

Comgest Far East Limited
Comgest Far East Limited
アナリスト・ポートフォリオマネージャー
デイビッド・レイパー氏(写真右)
アナリスト・ポートフォリオマネージャー
ジャスミン・カン氏(写真左)

中国株式の成長性をどう見ているか。

レイパー ここ6年程度で中国株へのエクスポージャーは急拡大している。グローバルエマージングのカテゴリーから見ても、中国は魅力的な成長企業が増えている。米中貿易戦争の原因の一端は、中国の生産する商品が、これまでの衣服や日用品などの廉価なものから、高度な技術を伴う付加価値の高いものにシフトしていることだ。

米中貿易戦争は構造的な問題であり、短期的には解決が難しいとみている。ただ、投資家目線で見れば、中国企業がより付加価値の高い製品やサービスを市場に供給しているということであり、企業の持続的な成長・長期投資という点ではポジティブに働く。中国株に投資する上で「付加価値の度合い」という尺度も、投資判断の材料の1つになるだろう。

どのような企業に投資しているか。

カン コムジェストが投資する中国企業は、中国国内のメガトレンドをとらえる企業ばかりだ。もちろん輸出企業などにも魅力的な企業もあるが、国内で高いシェアを持つ企業であれば、米中貿易戦争の影響も受けづらい。

例えば、日米欧の外国企業の販売網は中国の主要都市に限られることが多いが、国内企業は中国全土に販売網を張り巡らせており競争優位性がある。また、市場のニーズを素早くつかんで、製品やサービスにフィードバックできる点も国内企業の強みだ。外国企業が進出する際は、中国国内の規制などに対応する必要があり、これも参入障壁のひとつになっている。

国内メガトレンドは「消費」がキーワードだ。衣食住だけではなく、ヘルスケアや保険など、生活を豊かにする消費に着目している。このほかにも、インターネットや付加価値の高い食品などを生産・提供する企業も検討に値する。政府をはじめ企業も研究開発に多額の費用を投じていることから、資本財セクターのテクノロジーの進歩や、インターネット・AI(人工知能)などの進歩で恩恵を受ける企業にも注目している。

今後、中国株投資を行う上で必要な視点は。

レイパー GDP(国内総生産)成長率は、国の方針もあり、過去高い水準が続いてきた。ただ、インフラや電力など既存の産業がけん引してきたという側面がある。現在の中国は、インフラへの過剰投資ではなく、必要な事業への投資が行われていることでクオリティの高いビジネスが増え、GDP成長の「質」は高くなってきている。

米中貿易戦争の裏側には、数多くの投資機会が存在する。摩擦の中にあって、利益成長している中国企業は少なくない。ファンダメンタルズに根差した投資という考えが不可欠だろう。当社が投資企業を選択する際は、キャッシュの持続的な創出力、どのような負債を抱えているかを重点的に調査している。

なお、2009年以降、レバレッジが拡大していることが大きな懸念材料だ。世界的に波及する可能性のあるリスクとして注視している。また、個々の企業のガバナンスについて、改善の方向に進んでいるかを慎重に見極める必要がある。