会員限定
わずか1カ月半でトラス政権崩壊。イギリスの現状をどう見るか
市場の洗礼を浴びたトラスノミクス
突然の幕切れに、正直驚いた。英国のリズ・トラス首相がわずか45日で政権から降りてしまったのだ。企業体や国のトップはなかなかなれるものではない。しかし、なった途端に、こんなにもあっけなく終わることもある、という前代未聞の幕切れに、同じ女性としては胸が痛い。
イギリス保守党としてはこれ程の屈辱もないであろうし、イギリス国民としても恥ずかしさこの上ないであろう。考えてみると、これは国民の総意という、よくわからないものに迎合した結果が招いた失態であり、それ自体はどの国でも犯し得る失態である。心して記憶しておくべきである。
その意味で、イギリスの今回の顛末をまとめ、我々が学んでおくべき点を整理しておくことにする。
経緯
実質賃金が低下し、消費者信頼感が記録的低水準に落ち込む一方、インフレは高騰、英国経済は第3四半期時点で景気後退局面に陥る寸前となっていた。そこへ新政権誕生とともに「トラスノミクス」が始動したのであった。
当初こそ新風に期待もあったが、財政規律が弛緩(しかん)する懸念が浮上し、金融市場からの洗礼を浴びることになったことは記憶に新しい。
2022年9月23日に公表された「Growth Plan2022 (成長戦略)」は、内容としては図表1の通り。もともとロシア・ウクライナ問題で煮詰まっていたエネルギーについては、価格急騰対策として同年10月からの半年間で約600億ポンドを投じると表明していたが、そこに加えてのあらゆる側面からの減税策を講じるとしたのである。
【図表1】ユーロ圏消費者動向と平均
所得税:
|
法人税: 引き上げ中止、税率19%に据え置き |
その他: 印紙税控除拡大、酒税凍結、税制簡素化(非課税枠の拡大) それ以外:国民健康保険料の引き上げ、医療介護負担金の導入撤回やエネルギー価格保証も導入 |
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。