米国の独立系運用会社のユーソニアン・インベストメンツは、日本株に特化したバリュー投資戦略を提供している。同社のポートフォリオ・マネジャー兼CEOのドリュー・エドワーズ氏に、運用アプローチの特徴と日本株の可能性を聞いた。(取材日:2018年12月5日)

ドリュー・エドワーズ氏
ユーソニアン・インベストメンツ
ポートフォリオ・マネジャー兼CEO
ドリュー・エドワーズ

社員が株式を100%保有する独立系運用会社として出発して1年半経過した。

エドワーズ 当社は、米国シカゴに拠点を置くアドバイザリー・リサーチ社から独立して2017年8月に設立された独立系の運用会社だ。投資対象は日本株のみ。企業訪問などのボトムアップアプローチをベースに組入銘柄を絞り込む運用スタイルを採用している。

本社はシカゴ、リサーチ拠点は東京に置いている。現在の従業員は10名で、うち6人はアナリストだ。2名のアナリストは東京に常駐している。普段はシカゴで財務諸表分析やモニタリングを担当しているメンバーも定期的に来日し、企業訪問に同行したりする。

運用アプローチの特徴は。

エドワーズ 日本の中小型株はアナリストのカバー率が低く、「非効率性」が存在していると考える。2011年7月に運用を開始した欧米の機関投資家向けのフラッグシップ商品「日本株バリュー投資戦略」は、収益性が高く、健全なバランスシートを持つが過小評価されている銘柄に着目する。同戦略の運用総額は約10億ドル(約1200億円。2018年11月末現在)にのぼる。

ポートフォリオ運営では、株価下落局面のダウンサイド・リスク管理に注力している。約40の投資銘柄の平均保有期間は約4年。この間、投資先企業の経営陣とバランスシート改善や収益向上などの議論を深める。経営陣との建設的なエンゲージメントを重視している。

銘柄入れ替えはどのようなタイミングで検討するのか。

エドワーズ 我々は、企業訪問や財務分析、IR資料、ベンダー端末などから収集した企業情報を基に独自のデータベースを構築している。データベース内の投資候補リストには、「この条件をクリアしたら組み入れ可」という項目があり、該当する変化や取り組みが明らかになると自動的にアラームが届く仕組みになっている。企業訪問時点では投資を見送ったが、時間が経過して経営体制や企業戦略などが変わったときは投資のチャンスだ。

最近注目している保有銘柄は。

エドワーズ 例えば、マクセルホールディングスは、かつて日立マクセルという社名で日立製作所の子会社だった。グループ企業再編の一環として日立は2014年に保有株式を段階的に売却する方針を発表。2017年には筆頭株主から外れ、社名も現在の名称に変更となった。
マクセルホールディングスは、蓄電池や自動車関連など今後成長が期待できる事業を数多く手がけている。特定グループから外れたことで時代に合ったビジネスモデルに再構築できると同時に、経営の柔軟性が高まったことは同社の成長性にプラスに働くとみている。

今後の見通しを。

エドワーズ 多くの日本企業の業績は依然好調で、配当利回りを意識した経営者の増加は少数株主にも追い風だ。海外の運用会社にとって日本株の投資妙味は引き続き高いといえるだろう。