機関投資家の間では、長期的なリターンの向上に寄与する運用手法として「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」を採用する動きが広がっている。ESG投資はパフォーマンス向上に寄与するのか。関係者に話を聞いた。
GPIF採用のESG指数の運用成果はTOPIXを下回る
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2018年8月、2017年度のESG投資の取り組みをまとめた報告書を発表した。GPIFは報告書のなかで、2017年7月に採用した3本のESG指数のリターンは、いずれもベンチマークとするTOPIX(東証株価指数)を下回ったと説明した(図表1)。ESG投資とパフォーマンスの関係は、運用の専門家の間でも意見が分かれる。年金基金などの機関投資家は、GPIFの報告書をどのように受け止めればよいのか。
はじめに、GPIFのESG投資の考え方を整理しておこう。報告書によると、ESG投資の目的は「短期的な収益目的ではなく、ESG要素に関連するリスクを最小化し、ポートフォリオの長期的なリターンと金融市場全体の持続可能性を高めること」としている。ESG投資とパフォーマンスの関係については、「投資期間が長期になるほどリスク調整後のリターンが改善する効果が期待できるもの」との前提を示しつつ、投資の効果測定が重要とも述べている。
ESGとパフォーマンスの関係は、運用会社の間でもさまざまな意見がある。本特集では、①ESGのみに着目してリターン向上を目指す運用戦略は可能②ESGのみで超過リターンを説明することはできない――の2つのスタンスを紹介する。
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