不透明なマーケット環境下のもと、多くの日本の投資家は運用難に直面している。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、特徴的な仕組みを持つ商品ラインアップの拡充に力を入れている。

高格付けながら相対的に高い利回りを狙う『中国本土短期ソブリン債券ファンド』

日本の機関投資家を対象に提供を開始した『中国本土短期ソブリン債券ファンド』の魅力について、ポートフォリオ・ストラテジストの横谷宏史氏に聞いた。(取材日:2018年8月23日)

横谷 宏史氏
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
マネージング・ディレクター
ポートフォリオ・ストラテジスト(債券/為替)
横谷 宏史

『中国本土短期ソブリン債券ファンド』の特徴とは。

横谷 当ファンドは、これまで外国人投資家のアクセスが難しかった中国のオンショア市場のソブリン債を投資対象としている。当社は2017年に成立したボンドコネクト制度を活用して、中国銀行間債券市場で取引を行うためのIDを2018年6月に取得した。当社の調べによると、ボンドコネクト制度による中国本土債券ファンドの提供は現時点で国内初だ。

当ファンドは、3年以下の中国本土ソブリン債券を主要な投資対象としてパッシブ運用を行う。中国債券市場の規模は米国、日本に次いで世界3位。年限を3年以下に絞っても約190兆円の市場規模があり、流動性はきわめて高い。さらに中国の長期国債の格付けは日本と同じA+(S&P)と、信用リスクが相対的に低いのも中国本土ソブリン債券の特徴だ。

当ファンドの足元の利回りは円建てで約3.4%。格付けの低い新興国債券やハイイールド債券などで信用リスクを取ることなく、この水準の利回りを得られるとすれば、非常に魅力的な投資対象といえるだろう。

ステート・ストリートは、中国本土債券への投資を2005年から行っている。13年もの運用経験を有する運用チームの存在も当ファンドの強みだ。

中国本土債券市場の見通しについて。

横谷 中国の人民元建て国債が、債券の主要な指数である「ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックス」に、2019年4月から採用されることが発表された。同様に他の主要指数にも採用される見込みだ。中国債券市場の透明性や流動性の高さは国際的にも認められつつある。今後、同市場への資金流入はさらに活発化すると考えられる。

「超低コスト」ETFシリーズ提供開始、従来の経費率から最大0.48%引き下げる

2018年7月12日に日本で提供を開始した「超低コスト」ETFシリーズ「SPDRポートフォリオETF」について、マーケティング・ETFビジネス担当のディビット・コリンズ氏に聞いた。(取材日:2018年9月4日)

ディビット・コリンズ氏
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
取締役 マーケティング・ETFビジネス担当
ディビット・コリンズ

ディビット・コリンズ氏は、「米国で当シリーズを立ち上げる際、まずは既存ETFの信託報酬の抜本的な引き下げを行った。例えば、『SPDR ポートフォリオ米国大型株式ETF』は、2017年11月にベンチマークをラッセル1000から自社のSSGA大型株式指数に改訂し、指数利用料の負担を削減。現在の経費率は0.03%だ」と明かす。

昨年米国で提供を開始したETFシリーズは全15本で、平均経費率は0.06%。特に注目したいのが「SPDRポートフォリオ新興国株式ETF」だ。コリンズ氏は、「従来の経費率0.59%から0.11%まで引き下げた。この数字は、新興国株式市場全体から見ても超低コストといえる」と説明する。

米国で当シリーズがスタートした2017年10月の純資産総額は110億ドル。2018年8月末時点には、300億ドルに到達した。日本国内においても、オンライン証券が7月半ば頃から取り扱いを開始し、月末までに15本すべてに資金流入があったという。米国ではすでに機関投資家が導入しており、今後は日本国内の動きも期待される。

当シリーズの原型であるSPY(SPDR S&P500 ETF Trust)は、1993年に米国で初めて設定されたETFだ。上場当初は主に機関投資家間で短期トレードに活用されていたが、1998年に米国で個人向けのオンライン取引がスタート。ETFの本数は市場全体で31本に増加した。2008年頃にはロボアドバイザーが登場し、資産運用助言サービス開始とともにポートフォリオ組成ツールとしてETFの活用が拡大する。2018年1月末のETFの本数は、5311本だ。

機関投資家、個人問わず、長期的な資産運用ではコストがパフォーマンスに大きな影響を与える。「世界的な長期志向の増加を受け、今回の超低コストETFシリーズの立ち上げに至った」(コリンズ氏)