世界的なインフレ・金利上昇・地政学リスクの高まりのなか、欧米以外の5つの注目国の経済はどのような可能性と課題を抱えているのか。JBIC(国際協力銀行)の現地駐在員に聞いた(記事内容は2022年6月2日現在)。

高橋直樹氏
国際協力銀行
シドニー駐在員事務所 首席駐在員
高橋 直樹

オーストラリア経済の将来性は。

オーストラリア経済は2019年まで28年連続のプラス成長を達成。2020年はコロナ禍でマイナスだったが、2021年以降は回復の見込みだ。人口は現在約2600万人。積極的な移民受け入れ政策により、2066年までに最大約4900万人に達するとの政府の試算もある。

注目の産業・セクターは。

1つが人口増の追い風を受けるインフラ分野だ。政府は国内最大都市シドニーの西にもう一つの都心を建設する計画を含め、向こう10年で1100億豪ドル(約100兆円)のインフラ投資を予定している。この「西シドニー」には国際空港と地下鉄と最先端のが ん治療病院の設置が予定され、一部のプロジェクトには日本企業も参画を目指している。

もう1つが電力・エネルギーだ。足元の電源構成は石炭、ガスなどの化石燃料が8割弱だが、近年は再生エネルギーが増えている(図表)。

【図表】急拡大する太陽光発電設備容量
急拡大する太陽光発電設備容量
出所:Australian Energy Update 2021

南オーストラリア州では既に風力と太陽光が半分を占める。2022年5月の総選挙で勝利した労働党は、総発電量に占める再生エネ比率を2030年までに82%に引き上げることを公約に掲げていた。

資源国として、ロシアの液化天然ガス(LNG)の代替需要が期待できるとの見方も。

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