経済指標を読み解く 2022年1~3月期GDP統計での実質個人消費の前期比は、米国はプラス、日本はマイナスか
GDPの方向を決める最大の支出項目である個人消費
個人消費は GDP(国内総生産)のなかで、シェアが一番大きい需要項目だ。米国でのシェアは70%弱で、日本では55%弱である。
米国ではGDPの発表日の翌営業日に発表される「個人所得・個人消費」という月次統計が注目される。GDPの実質個人消費とピタリと一致する月次の個人消費のデータがあるからだ。
米国の2021年10~12月期の実質GDP(季節調整済み年率)は19兆8063億ドル、うち個人消費は13兆8184億ドルでシェアは69.8%である。
2021年10~12月期のGDP最終推定値は2022年3月30日に発表されたが、翌営業日の3月31日発表の2月分「個人所得・個人消費」には月次の実質個人消費(季節調整済み年率)が記載されている。
2021年10~12月の実質個人消費(季節調整済み年率)の月次のデータ(10月の13兆8910億ドル、11月の13兆8799億ドル、12月の13兆6841億ドル)を平均すると、前日に発表された四半期データである同年10~12月期のGDPの実質個人消費の数字と同じになる。
その後の月次の実質個人消費は、2022年1月分が13兆9754億ドル、2月分が13兆9240億ドルとしっかりした数字で発表されている。2022年4月29日公表予定の同年1~3月期の実質GDPのうち、実質個人消費の2カ月分が既に分かっているわけだ。
2022年1~2月平均の2021年10~12月平均比はプラス1.0%、年率プラス3.9%とプラスの伸び率になる。仮に実質個人消費の3月分を横ばいと置くと、2022年1~3月期の実質個人消費は前期比年率プラス3.6%程度となる。
ここに実質個人消費のシェアである約0.7を掛けてみると、実質個人消費が実質GDPを押しあげる前期比年率寄与度は、プラス2.5%程度と計算できる。過去の数字が若干修正される可能性があるものの、2022年1~3月期の実質GDPでは個人消費の前期比はプラスの数字になることが分かる。
日本の2022年1~3月期の実質GDPの個人消費は、前期比マイナスか
日本には米国のように3カ月分を足して3で割るとGDPの個人消費にピタリと重なる統計はないが、かなり近い数字になるものがいくつかある。
まず、総務省の総消費動向指数が挙げられる。これは家計最終消費支出の推移を様々な月次データによる時系列回帰モデルによって推測している。2022年1~2月平均の対2021年10~12月平均比はマイナス1.0%、年率換算するとマイナス3.8%だ。実質GDPに対する前期比年率寄与度を試算するとマイナス2.1%程度となる。
また、財とサービスに関する各種の販売・供給統計の月次データから算出している日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)もある。2022年1~2月平均の対2021年10~12月平均比はマイナス3.8%、年率換算するとマイナス14.3%だ。こちらでは実質GDPに対する前期比年率寄与度はマイナス7.7%程度となる。
内閣府が「月例経済報告」の個人消費の総合的な基調判断材料として作成している消費総合指数もある。厳密には個人消費から対家計民間非営利団体最終消費支出を引いた家計最終消費支出(全体の97%)に合わせたものだ。
2015年を100とした指数で見ると、2022年1月分が97.3で、2021年10~12月平均は96.8である。2022年1月分対2021年10~12月平均比はプラス0.5%で、年率換算するとプラス2.1%になる。
2021年10月分が95.2と低い指数になっていることが影響し、この統計のみプラスである。実質GDPに対する前期比年率寄与度を試算するとプラス1.1%程度である。
総合的に判断すると、まん延防止等重点措置が四半期のかなりの期間で発令されていた2022年1~3月期の日本の個人消費はマイナスになり、2022年5月18日に公表される同年1~3月期GDPの押し下げ要因になることが予想される。
ESPフォーキャスト調査では、高位8人予測平均でも個人消費はマイナスに
エコノミストのコンセンサス調査であるESPフォーキャスト調査の4月調査を見ると、2022年1~3月期の実質個人消費の予測総平均は前期比マイナス0.82%、前期比年率マイナス3.2%である。
【図表】実質個人消費・実質GDP成長率 前期比年率推移
低いほうの8人の平均は前期比マイナス1.60%、前期比年率マイナス6.2%である。一方、高いほうの8人の平均も前期比マイナス0.26%、前期比年率マイナス2.9%とマイナスである。
2022年1~3月期の実質GDP第1次速報値では、個人消費の寄与がマイナスになるというのがコンセンサスになっている。