2022年1~3月期は再びマイナス成長に転じる見通し

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2022年1~3月期の日本経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で再びマイナス成長に転じたとみられる。当研究所では、2022年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率0.8%のマイナス成長と予測している。

感染拡大で外出を控える動きが広がり、外食や宿泊旅行などのサービス消費が落ち込んだことが主因である。ガソリンなどのエネルギー価格の上昇も消費マインドの下押し要因になったとみられる。

もっとも、新型コロナの感染者数は2022年2月上旬をピークに減少し、3月頃からは人々の外出行動が緩やかに回復している。2022年3月22日からは東京や大阪など大都市に発令されていた「まん延防止等重点措置」も解除され、観光地や商業地への客足も戻ってきている。

部品不足の影響で生産回復の動きは広がらず

感染一服を受けて足元の経済活動は持ち直しているが、当面の景気回復テンポは緩慢にとどまると予想している。新型コロナの感染再拡大のリスクが残ることも一因だが、2022年の日本経済をけん引すると想定している製造業の回復に弾みがつかないためだ。

製造業の活動状況を示す鉱工業生産指数をみると、2022年2月の指数は前月比0.1%増と3カ月ぶりに上昇したものの、経済産業省による予測の試算値(0.7%増)を下回った(図表)。

【図表】鉱工業生産指数と実質輸出の推移

鉱工業生産指数と実質輸出の推移
出所:日本銀行、経済産業省

指数水準も2021年前半のレベルに届いていない。業種別では、部品不足が緩和した自動車工業が前月比10.9%増と持ち直したものの、部品不足の影響は自動車以外の産業にも広がっており、生産用機械や電気機械、情報通信機械などの生産が減少している。

部品不足の影響はこの先も生産活動の制約要因となる可能性が高い。特に自動車生産への影響が再び強まる可能性がある。

すでに、2022年3月には福島県沖地震の影響で数日間の工場停止を余儀なくされたことに続いて、半導体不足の長期化や中国・上海のロックダウンによる部品供給の遅れなどで、自動車メーカー各社は2022年4月も一時的に工場の稼働を停止すると発表している。

また、ロシアによるウクライナ侵攻の影響も不安要素に加わってきた。排ガス浄化装置の触媒であるパラジウムは、ロシア産が世界生産量の4割を占めており、紛争が長期化した場合には世界の自動車生産に影響が広がる恐れがある。

自動車メーカー各社が見込んでいた挽回生産は早くとも2022年夏以降にずれ込むと予想される。

供給制約が輸出の本格回復を阻む要因に

自動車生産の回復の遅れは輸出にも波及する。輸出総額に占める輸送用機械の比率は約20%と大分類9品目中で最も大きく、2021年夏も供給制約に起因する自動車生産の落ち込みを受けて輸出全体も下振れしている。

米国を中心に海外での日本車需要は依然として旺盛な状況が続いているが、自動車輸出の回復が本格化するまでには、なお時間を要するとみられる。

当研究所では、新型コロナの感染一服を受けて、2022年4~6月期から7~9月期にかけて景気の回復テンポが高まるとの見方を維持しているが、供給制約の長期化による輸出の伸び悩みや納車遅れに伴う自動車販売の停滞などで、景気下振れのリスクも小さくないと考えている。