ロシア・ウクライナ問題などが欧州財政に与える影響
目下の優先事項はインフレ対応
世界はいま、さまざまな問題に直面している。例えば、先進国を中心とする金融政策の転換点のほか、居座り続けるコロナの影響やロシア・ウクライナ問題によるインフレのまい進などだ。
これらの問題に対して、賢い支出(ワイズスペンディング)が必要になるわけだが、そうでなくとも債務負担は増大化の傾向にある。いかに効率よく財源を成長戦略に結び付けられるか、それぞれの国がチャレンジすることになるであろう。日本も例外ではなく、自国のチャレンジのためにも他国の動向を探るのは重要である。今回は欧州の財政政策の当面の目玉となるインフレ対応策および財源について、状況を観察することにする。
パンデミックと同様に、ロシアのウクライナ侵攻による危機的な状況で、EU(欧州連合)レベルでも一国レベルでも、欧州の大規模な財政対応に向けた推進力と政治的意志を生み出している。ドイツは国防支出に関する政策の転換を発表。EUは防衛支出とエネルギー支出を賄うために大規模な共同債の発行を実施する可能性もある。
積極的な財政対応は、経済活動に対する当面のショックを和らげるのに役立つ。各国政府にとっての最優先事項は、今回のショックによる直接的な影響、とくにインフレ率の上昇に対処することである。政府が最初に実施する措置は、低所得世帯向けのエネルギー関連給付金など、的を絞った支援策の継続である可能性が高い。しかし、ショックが長引き、拡大するにつれ、的を絞った支援策に加え、減税などのより広範な措置が講じられる公算が大きい。以下の図表1にいくつかの選択肢を示すので参照してほしい。
【図表1】インフレ・ショックの影響に対処するための政策オプション
政策ツール | 利点 | 欠点 |
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家計への移転(エネルギー給付金など) |
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国家支援 |
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エネルギー減税(付加価値税(VAT)など) |
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価格上限の設定 |
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エネルギー企業に一定の価格・量での供給を義務付ける |
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出所:Reuter Ecowin Pro, BNPパリバ証券
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