経済指標を読み解く 景気動向指数・基調判断「足踏み」から「改善」への上方修正は、2022年3月8日発表の2022年1月分では見送りの可能性大か
2021年12月速報値は先行CIが3カ月連続の上昇、一致CIが3カ月ぶりの下降
景気動向指数の2021年12月分速報値では、先行CI(コンポジット・インデックス)が前月差プラス0.4と3カ月連続の上昇となった。
速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDI(ディフュージョン・インデックス)の4系列が前月差プラス寄与度に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差マイナス寄与度になった。
2021年12月分改訂値では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)・確報値と実質機械受注がプラス方向に寄与して、先行CIは上方修正になりそうだ。
同月の速報値で、一致CIは前月差マイナス0.2と3カ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の3系列が前月差プラス寄与度に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の5系列が前月差マイナス寄与度になった。
2021年12月分改訂値では、商業販売額指数・小売業・確報値がわずかな下方修正要因になるものの、労働投入量指数、投資財出荷指数・確報値、商業販売額指数(卸売業)・確報値が上方修正要因になり、一致CIは若干の上方修正になりそうだ。
【図表】景気動向指数:先行CIと一致CI
景気動向指数の基調判断が「改善」に戻る条件
最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、2020年8月分で「悪化」から「下げ止まり」へと13カ月ぶりに上方修正された。その後、2020年9月分から同年12月分まで「下げ止まり」で同じ判断が継続した。
2021年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2021年2月分では判断が据え置かれた。同年3月分で「改善」に上方修正され、4月分~8月分と「改善」の判断は据え置きになっていたが、9月分で景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」に下方修正され、10月分・11月分でも同じ判断継続となった。
景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るためには、「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇・当月の前月差の符号がプラス」という条件を満たす必要がある。
2021年12月分速報値の3カ月後方移動平均は前月差プラス1.14の上昇だが、まだ2カ月連続の上昇であり、前月差もマイナスで2つとも条件を満たさなかったため、12月分で「足踏みを示している」の判断が4カ月継続となった。
2022年1月分の生産指数は前月比マイナスの可能性大
2022年1月分で前月差プラスの条件を満たせば、3カ月後方移動平均は3カ月連続上昇になるので、2022年3月8日発表の2022年1月分で「改善」に戻る可能性があったが、難しくなったようだ。採用系列の2022年1月分を予測してみると、前月差はマイナスになってしまう可能性の方が大きそうだ。
なお、過去の数字が変わらないとすると、2022年1月分で3カ月後方移動平均は一致CIの前月差がマイナス2.7以上であればプラスになるので「改善」への条件を満たす。あとは一致CIがプラス0.1でもプラスになればよいのだが、難しそうだ。
生産指数の関連データである製造工業予測指数の2022年1月分は、前月比プラス5.2%の上昇見込みである。
過去のパターンなどで製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、2022年1月分の前月比は先行き試算値最頻値でプラス0.6%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲はマイナス1.5%~プラス2.7%になっている。
しかし、ロイター短観・製造業DIは2021年12月のプラス22から2022年1月のプラス17へと低下した。2月はプラス6と2021年3月以来の低水準で、原料高や供給制約が重石になっている。
また、2013年1月から2021年12月まで期間の相関係数が0.82と高い景気ウォッチャー調査・製造業・現状水準判断DI(季節調整値)は、2021年12月の49.4から2022年1月には42.6に落ち込んでいる。
また、同年1月分の日銀実質輸出・前月比はマイナス1.5%とマイナスとなっている。
2022年1月分の生産指数は前月比マイナスになる可能性がある。一致CIには生産関連の指標が多く採用されているので、それらが前月差プラスに寄与することはあまり期待できない。
2022年1月分の商業販売額・小売業の前年同月比は微妙だ。2021年12月のプラス1.2%からは大きく変化しないのではないかと思われる。
新型コロナウイルスのオミクロン型変異株の流行とまん延防止等重点措置の発令で消費環境は良くないが、比較対象の2021年1月もコロナの影響を受け緊急事態宣言が発令されていたので、2022年1月分の大手百貨店4社の売上高・前年同月比の単純平均のように改善したものもある。2022年1月分はプラス20.9%で、2021年12月分のプラス9.9%から20ポイント改善している。
また、スーパーの売上高・前年同月比を日経ナウキャスト月次売上高でみると、2022年1月分の前年同月比はプラス1.4%と2021年12月分の同プラス0.5%から0.9ポイント増加している。
一方、半導体不足の影響が残る新車新規登録届出台数(乗用車)の2022年1月分前年同月比はマイナス16.1%と、12月分マイナス11.1%からマイナス幅が拡大している。また、同年1月分の有効求人倍率は2021年12月分の1.16倍から大きくは変化しないとみる。
景気ウォッチャー調査の雇用関連の現状水準判断DI(季節調整値)は2021年9月分41.9、10月分50.4、11月分51.9、12月分54.9と改善傾向にあったが、2022年1月分は45.4まで低下した。一方、やや先行性がある新規求人倍率は2021年12月分2.30倍で、前月に比べて0.17ポイント上昇している。
総合的に判断すると、微妙だが2021年1月分の一致CI前月差は若干のマイナスになる可能性の方が大きそうだ。基調として景気判断が「改善」に戻ることは先送りになりそうだ。