豊富な研究資金を確保する海外大学との競争や少子化に伴う財源確保のため、大学の資産運用の重要性が叫ばれている。その裏では既に、寄付金を主な財源とした「エンダウメント(基金)」という独自の運用体制の下、少しでも高い利回りを追求しようと努力する担当者の姿がある。大学基金の運用担当者や有識者の声を通じ、教育法人の資産運用戦略と今後の展望について概観する連載「大学基金の運用戦略」。第1回では専門知識を有する卒業生などからのサポートを受ける独自の体制のもと運用を行う東京理科大学の運用方針に迫る。
ひと工夫あるオルタナティブ資産で債券運用をカバー
私立大学の財政は学納金に頼ることがほとんどだ。しかし現在、海外大との競争激化や少子化のあおりを受け、国内の各私大では十分な教育研究資金を確保するために資産運用に取り組む重要性が増している。
「中長期的な大学の財政基盤を支えるべく、教育研究または奨学金の原資を確保する」。こう話すのは東京理科大学で資産運用の指揮を執る常務理事の樋上賀一氏。同大学では足元で債券50%、オルタナティブ資産50%のポートフォリオを組み、「しっかりリスクを抑えた」大学資産の運用を行っている。
特に債券投資では、比較的リスクが低い公共債や社債などにアロケーションを割く。また同大学ではインカム収益を重視する方針を打ち出しており、そこでよりリターンを望める海外債券の比重が大きくなっている。「ただしアセットアロケーションは状況を見て機動的に変更する。現在は米国債の長期金利上昇の影響を注視し、より慎重なポートフォリオ構築を検討している」(樋上氏)
ただ、金利が上昇トレンドに転じ始めているとはいえ、金利水準はまだまだ低い。低リスクの債券運用を中心に、インカム収益で同大学の年2%以上の目標リターンを達成するのは決して容易ではない。そこで効果を発揮するのが、残り半分を占めるオルタナティブ資産への投資だ。
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