森田 敏夫
日本証券業協会
会長
森田 敏夫

超高齢化社会に突入し、様々な社会的課題をかかえる我が国において、あらためて証券業務の重要性が問われている。本協会では次の4つの施策に重点的に取り組んでおり、それぞれ実現に向け、順次、具体的な検討に着手しているところである。

まずは「SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取組み」である。脱炭素、グリーン社会に向けたサステナブルファイナンスを推進するため、SDGs債の普及に向けた取り組みを継続するとともに、投資家や発行会社のサポートなど環境整備に関する検討を行っていく。この分野の動きは目まぐるしく、国際的に情報開示などに関する様々な検討がされており、本協会としてもしっかりと意見してまいりたい。

次に「デジタルトランスフォーメーションの促進」である。投資者保護に配慮しつつ、証券取引の様々な局面でペーパーレス化・デジタル化を徹底的に進め、顧客利便の向上、業務の効率化につなげていきたい。加えてマイナンバー制度の定着を図りつつ、利用範囲の拡大の検討を進めていく方針だ。また、在宅勤務が常態化するような環境下でのスムーズな業務運営の一助となるよう、証券会社に対する研修などを検討したい。

「国民の資産形成支援の強化」については最も注力しており、証券業界が取り扱う金融商品を中長期に安心して保有できる環境を整え、国民による資産形成の「定着」を推し進めていく。特にNISA(少額投資非課税制度)の活用は資産形成における有効な手段であり、制度のさらなる拡充に向けて関係各所との調整を進めてまいりたい。また、資産形成の定着のためには、金融リテラシーの向上は不可欠であり、世代や職業などに応じた取り組みをさらに強化していく必要がある。

最後に「高齢化社会に対応した金融サービスの実現」である。難しい問題ではあるが、超高齢社会の進展に伴い、高齢顧客の状況に応じた、より丁寧な金融サービスが求められている。高齢者が元気なうちに次の世代との取り決めができるような環境整備、認知・判断能力の低下に備えた資産運用・管理や代理人取引の在り方の検討など、必要な施策に取り組む。

これらを実現していくためには、人材の育成と国内外のステークホルダーとの連携強化が重要である。本協会としても各社の取り組みを後押ししていくとともに、必要な情報を積極的に発信していきたい。