国内生産はコロナ禍の落ち込みをほぼ取り戻す

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

緊急事態宣言の再発令を受けて経済活動が停滞する一方、製造業はコロナ禍の落ち込みから着実な回復を遂げている。代表的な指標である鉱工業生産は、2020年末にかけて減速したものの、2021年1月は前月比4.2%増の97.7と感染拡大の影響を受ける前の2020年2月の水準(99.5)まであと一歩のところまで持ち直した。

国内生産の回復をけん引しているのが電子部品や情報通信機械などのIT(情報通信)関連産業である。2021年1月は、電子部品・デバイスが前月比10.5%増、情報通信機械が同13.7%増と大幅に増加し、両業種を加重平均した指数は過去ピークである2018年10月の水準を更新した。コロナ禍におけるテレワークやオンライン授業の定着、ネット通販の拡大に加え、次世代通信規格である「5G」が普及期を迎えていることが半導体など電子部品の需要を押し上げている。

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米中を中心とした世界経済の回復が日本の製造業の追い風に

世界的にもIT関連需要は拡大局面にある。世界半導体出荷額の動きをみると、2020年2月に前年比でプラスに転じた後、コロナ禍においても底堅さを維持し、2021年1月には前年比13.2%増と2年3カ月ぶりに2ケタの伸びを記録した。半導体など電子部品の需要は足元でも堅調に推移しており、当面もIT関連産業の生産活動は増勢を維持する見通しである。

米中の景気回復を背景とした輸出の増加も国内生産の回復に寄与している。特に、米景気の回復による恩恵は大きい。日本の輸出は6割弱が中国を含むアジア向けだが、そのうち最終需要地を米国とする製品が少なくないためだ。実際、アジアの対米輸出が増加する局面では、日本のアジア向け輸出が連動して増加している(図表)。米景気の持ち直しに伴うアジア地域での生産拡大が、日本からアジアへの輸出増という経路で国内生産の回復に寄与している。

【図表】日本の対アジア輸出とアジアの対米輸出の前年比増減率

図表
(注)四半期・ドルベース、直近は21年1月。アジアは中国を含む主要9か国
(出所)財務省「貿易統計」、米国センサス局

回復テンポを高める米国経済

米国経済は新型コロナの感染再拡大の影響で2020年末にかけて減速したものの、足元では回復の勢いを取り戻している。新規感染者数の減少やワクチン接種の進展に加え、2020年末に成立した現金給付や失業保険の特例措置などで個人消費が上向いているためだ。企業マインドの改善で設備投資の増勢も加速しており、2021年1~3月の実質成長率は年率で10%を超える高い伸びとなろう。4~6月以降もバイデン政権が提案した経済対策(1.9兆ドル)の効果で高成長が続く見通しである。

コロナ禍で経済停滞が続く欧州についても、製造業に限れば回復の動きを維持している。新型コロナウイルスの世界的な収束にはなお時間を要するものの、日本の輸出を取り巻く環境は良好で、外需を支えに国内製造業はこの先も堅調に推移するとみられる。日本経済は緊急事態宣言の再発令の影響で2021年1~3月には再びマイナス成長に転じる見込みだが、製造業の回復が景気の落ち込みを幾分和らげると予想している。