FRBの異例の金融緩和策も高値圏での推移が続くドル

橋本 将司
公益財団法人 国際通貨研究所
上席研究員
橋本 将司(はしもと・まさし)
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。2020年より再び国際通貨研究所へ出向し、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。国際通貨研究所ホームページにも各種レポートを掲載

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、世界経済は2020年初の時点では想定し得なかった深刻な景気後退に陥ることとなった。景気の落ち込みを可能な限り限定的なものとするため、各国当局は前例のない財政・金融政策による景気対策を総動員している。米国においても、FRB(米連邦準備理事会)が同年3月以降ゼロ金利政策を復活させるとともに、無制限の米国債買い入れや一部投資不適格級の社債の買い取りを含む、これまでにない大規模な量的金融緩和政策に踏み込んだ。米金利は3月にかけて急低下し、米日の10年国債利回り格差は大幅に縮小した。しかし、ドルは大局的には底堅い推移が続いている。

その要因の1つは、信用リスクを警戒する動きの急速な台頭でドルのキャッシュへの選好が強まり、ドルの上昇につながったことだ。ただし、FRBは金融緩和や海外中央銀行とのスワップ取極(とりきめ)の強化によりドルを大量に供給しており、一時期のパニック的なドル不足への警戒は後退している。それでも高値圏での推移が続くドル相場の背景には何があるのであろうか?

「米国経済一人勝ち」も後押し。足元はドル上昇サイクルが継続

一般に為替レートの変動は、約10年以上の長期にわたる趨勢的なトレンドと、その周りを数年単位で形成するサイクル的な変動に分けて考えることができる。このうちサイクル的な変動における重要な決定要因は、金利要因とともに、それ以外の様々な材料を織り込んで変動するファクターと筆者は考えている。

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