ピムコ 175社超の債券発行体との対話の成果を「ESG投資年次レポート」で紹介
ピムコは2018年から、ESG(環境・社会・ガバナンス)のトレンド分析や自社の運用業務への応用などをまとめたESG投資年次レポートを発行している。最新版の内容について、同社の米国コア戦略担当最高責任者(CIO)、ESG戦略担当のスコット・マザー氏に聞いた。
(取材日:2020年6月15日)
レポートを発行したきっかけは。
マザー ピムコは2018年に初めてESG投資年次レポートを発行し、環境、社会、ガバナンスの要因をピムコの投資プロセスにどのように組み込んでいるかなどについて説明した。当時は債券におけるESG投資についての理解はまだ初期段階といえるものだったが、多くの地域や投資家の間では関心が徐々に高まっていた。ピムコでは以前よりESG関連の人的資源やツール、商品などを充実させており、債券発行体や業界団体とのエンゲージメント(対話)活動を強化してきた。こうしたパートナーシップやエンゲージメントは、ポジティブ・インパクトのために不可欠であり、その精神のもとピムコは最初のレポートを導入した。
2020年発行版の構成は。
マザー ピムコは債券投資家として、ESG投資を通じて変化を推進する方法は6つあると考えている(表)。最新のESG投資年次レポートでは、2019年に175社を超える債券発行体と対話を実施した、環境、社会、ガバナンスの各要因についての緊密なエンゲージメントの成果について、16のケーススタディを通じて具体例を紹介している。
レポートから浮かび上がったESGのトレンドとは。
マザー 債券業界は世界の資本市場の力をより持続可能な未来への原動力として活用し始めたばかりだが、過去1年間で我々は劇的な変化を目の当たりにした。サステナブル債券の発行は増加し、ESGに準拠した行動に関する発行体からの質問も増えている。債券発行体のESGリスクに関する格付け機関の評価が、資本コストに影響を与える事例も増えている。最も重要なのは、責任投資がより主流になってきていることだ。
175社以上の発行体との対話を運用業務にどう生かしているか。
マザー ピムコの投資プロセスは、ESGリスク要因をトップダウン(マクロ)とボトムアップ(発行体および個別銘柄)の両方から評価している。グローバルなクレジットリサーチのチームとポートフォリオ・マネージャーは、調査分析の一環としてカバーしている発行体全体でESG関連の観点から評価している。2019年に実施した175社以上の発行体との対話の大部分は、環境リスクとグリーンボンドの枠組みに焦点を当てたものだった。
世界的な超低金利で債券投資によるリターン獲得が難しい現状をどう見るか。
マザー ピムコでは、今後1年は利回りの水準は一定の範囲内に留まると予想しているため、国債への投資によって利回りをとるのは大きな課題となる。一方、ポジティブな側面としては、グローバル市場の一部のセグメントでは継続的な価格の変調が見られる。社債市場では大量の新規発行が見られ、興味深い投資機会を生み出している。
今日の高格付け債券市場は、投資家がとる金利リスクに対してあまりプレミアムをつけていないが、それでもピムコは、高格付け債が持つ防御的な特性と分散効果により、ポートフォリオにおいて一定の役割を果たすことができると考える。
日本の機関投資家へのメッセージを。
マザー ビジネス慣行をより持続可能な形に改善する意欲のある発行体と協力し、資本を配分することで、貧弱なESG指標を持つ発行体を単に除外するよりも大きなインパクトを生み出せるだろう。ピムコでは債券投資を通じて持続可能性を達成するためには、このようなアクティブ運用こそが最も効果的かつ責任ある方法だと確信している。
さらにESG投資という観点では、発行体と積極的に対話することを指す。ピムコのエンゲージメントとアクティブ運用のその運用規模ゆえに、発行体によるコミットメントの範囲や実施のタイミング、そしてそれらの発行体が投資家に報告する開示内容に影響を与えられるだろう。