日本株
予想以上の円安・株高が進展、見通しの引き上げも
東京海上アセットマネジメント投信のチーフファンドマネージャー、平山賢一氏が2011年末に立てた2012年の日米株式市場の見通しは、「2011年の高値と安値のレンジのなかで上下に動く」というものだった。
米国株式市場は前年の高値を上抜けしたが、日本株はほぼその通り推移した。「世界的にリスクオン、リスクオフの相場が繰り返されるなかで、日本株だけは米国の量的緩和第3弾(QE3)の恩恵をあまり受けることができなかった」と平山氏は振り返る。
民主党政権に交代した2009年9月時点では、S&P500もTOPIXも同レベルにあった。2012年10月時点では、T OPIXはS&P500の約半分。期間中、米国株式は緩やかに上昇したが、日本株は下落した。それが、2012年11月の衆院解散の声とともに跳ね上がった(図表3)。
2012年の日本株市場は、前半は過去3年間を引きずるかたちで、海外投資家から見放され、円高の影響も受けて低迷した。年末にかけては政権交代への期待から上昇したが、「元に戻るだけという印象が強い」と話す平山氏。2013年は「TOPIXとS&P500の水準が同程度になる」との見通しだ。
2012年は、優良企業の株価が上がらず、医薬品など安定的なセクターの株価が堅調に推移した。アクティブ運用を行う機関投資家の資金が減ったことが、その理由だという。年末にかけては、円安期待から為替感応度の高い銘柄が上昇した。「10月までの10カ月と、残りの2カ月は好対照だった。この現象は2013年も続きそう」と平山氏はみる。
背景には、世界のジャパナイゼーション(日本化現象)がある。世界の長期金利が2%を下回り、金利差が縮まったものの、円高が進まなくなっている。円高リスクを感じていた製造業、なかでも輸出比率の高い企業が見直され、株式市場をけん引していく。「レバレッジをかけた企業よりも、優良な企業、誰がみても良いという企業が買われる」(平山氏)
日本も世界と同じように動く「ジャパナイゼーション」の先には、世界的なインフレ率の上昇と金利の反転が待っている、と著書『2013年、インフレ到来』(朝日新聞出版社)でも指摘する。「2013年は分岐点となる年。日本株は2012年の高値を大きく上抜ける可能性もある」(平山氏)
みずほ証券は、2013年6月末の日経平均予測を1万1000円から1万2000円に引き上げた。「日本株にとって明るい新年を迎える」──。チーフ株式ストラテジスト、菊地正俊氏らがまとめた2013年1月4日付のレポートのタイトルには、こうある。
予想以上の円安と米国の「財政の崖」回避が主な理由だ。2012年12月のレポートでは、2013年度1ドル=82円を前提にしていたが、暫定的に87円に変更した。
2013年の株式市場は「アベノミクス」への期待が高まる前半は強いものの、7月の参議院選挙以降は、政策公約の未達から失望感が出て、一度下落した後にボックス圏になるという方向性の見方は維持する。
日経平均が1万3000円超に上昇するポジティブ・シナリオは、①政策期待で日本のPERが東南アジア諸国連合(ASEAN)並みに上昇 ②円の対ドルレートが100円に下落 ③米国経済の正常化期待の強まり──などが条件になるという。
注目されるテーマ、業種として、以下の3つをあげている。
■2012年末に報道された、政府の過剰設備の買い取りによって、総資産に占める工場・設備比率が高い企業が政策から恩恵を受ける。
■1ドル=87円台に下落し、90円を目指す動きになってくると、トヨタなどの円安恩恵の主力株が再注目されるが、循環物色のなかで経営状況が悪くても、テクニカルに出遅れている円安恩恵銘柄にも物色の矛先が向かう。
■出来高増加と信用取引制度の緩和により証券株も注目される。