為替介入では円安は止まらない
- ドル円相場は200円に向けた上昇基調に復帰する
- 崩壊の危機に瀕するドルを基軸通貨とする国際通貨体制
- 西半球を超えた国々による米国債の継続保有は必須
- 日本財務省は世界最大の円キャリートレーダー
- ドル売り介入による米国債の大量売却は容認不可
- ドル売り介入は抜くに抜けない「伝家の宝刀」
ドル円相場は200円に向けた上昇基調に復帰する

梅本 徹
米トランプ政権が掲げる「ドンロー主義」によって、既に自由貿易体制は壊滅しつつあり、米ドルを基軸通貨とする国際通貨体制も崩壊の危機に瀕している。
ドルと米国債を大量に売却する行為である日本のドル売り介入は、ドル本位制崩壊の引き金となりかねない。ドル売り介入は抜くに抜けない「伝家の宝刀」と化した。ドル円相場は、早晩、200円に向けた上昇基調に復帰するであろう。
崩壊の危機に瀕するドルを基軸通貨とする国際通貨体制
米国は、第二次世界大戦後、GATT(関税及び貿易に関する一般協定、1995年にWTO(世界貿易機関)に移行)とブレトンウッズ体制などを通じて、世界に自由貿易体制とドルを基軸通貨とする国際通貨体制を構築した。ところが、2017年に始まる米中貿易戦争と2025年に米国が導入した相互関税によって、自由貿易体制は既に崩壊した。
さらに、2022年のロシアによるウクライナ侵攻への経済制裁を契機に東側諸国が人民元経済圏構築に動き始めたことに加え、2026年のドンロー主義の導入とグリーンランド領有権をめぐる米欧対立によって、ドルを基軸通貨とする基軸通貨体制が崩壊の危機に瀕している。
西半球を超えた国々による米国債の継続保有は必須
経常・財政収支の双子の赤字を抱える米国のドルが基軸通貨であり続けるためには、恒常的に増発される米国債が西半球を超えた海外部門によって継続保有されることが必須である。
そのような中、グリーンランドをめぐる米欧対立が激化した2026年1月20日、デンマークの年金基金アカデミカーペンションが同月末までにたった1億ドル(158億円)の米国債売却を公表すると、トランプ大統領は1月22日に、欧州諸国が米国国債を売却すれば「大規模な報復措置をとる」と発言した。
日本財務省は世界最大の円キャリートレーダー
現在、日本の財務省は、外為資金証券(為券)発行によって調達した93兆円の円資金を米国債中心の1.1兆ドルの外貨準備で運用する、世界最大の円キャリートレーダーである(図表)。そして、財務省による円安を止めるためのドル売り介入は、ドルと米国債を大量に売却する行為にほかならない。
財務省は、2024年4月29日と5月1日の2日間で9.8兆円、7月11、12日の2日間で5.5兆円相当のドルを売却しており、これらはデンマークの年金基金が今回公表した金額とは比較にならないほど大きい。

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ドル売り介入による米国債の大量売却は容認不可
グリーンランドをめぐる欧米の対立と高市政権による放漫財政を嫌った日本国債と円のスパイラル的下落が米国債市場へ波及したことで、2026年1月20日の米国市場では、株・債券・為替のトリプル安が起きた。同1月23日のニューヨーク市場では、米国財務省とFed(米連邦準備制度)が日本の当局の円安抑制に協調したとの見方が広まった。
しかし、ドル本位制が危機に瀕し、トランプ大統領がたった1億ドルの米国債売却に躍起となっている中で、米国財務省が、日本の財務省が常としている1回5~10兆円(30~60億ドル)単位の円買いドル売り介入を容認するとは考えにくい。
ドル売り介入は抜くに抜けない「伝家の宝刀」
2026年1月28日、ベッセント米財務長官は「為替介入はしていない」と明言。そして翌1月29日に米財務省が発表した半期為替報告書からは、前回掲載された「円安ドル高是正のために、日銀は金融引き締めを継続すべき」との一文が削除された。
翌1月30日には、日本財務省が2025年12月29日~2026年1月28日における為替介入の不実施を公表した。ドル売り介入は抜くに抜けない「伝家の宝刀」と化したといえよう。









