学校法人・金融法人の担当者必見! 機関投資家ゼロからの資産運用 【オルタナティブ編 第8回】金利のある世界はヘッジファンドの出番〜「銘柄間格差」「ミスプライス」=収益機会
オルタナティブ運用の多彩な戦略や仕組み、留意点などを7回にわたって説明してきました。今回はオルタナティブ編の最終回です。オルタナティブの「先頭打者」的存在で、多くの戦略が存在するヘッジファンドを採り上げます。金融緩和期には低迷傾向が続きましたが、最近は勢いを盛り返してきたようです。その背景や今後の見通しなど、ラッセル・インベストメントの金武伸治さんにじっくり伺います。
個別銘柄の「ミスプライス」に照準
今回は、ざっくり「ヘッジファンドはどうやって稼ぐのか」を知りたいです。
金武 個別銘柄選択を主軸とするボトムアップ型から、市場方向性を収益源泉とするトップダウン型まで。そして伝統的資産・手法では追求できないリターン源泉やリスク源泉まで。こうした多種多様なヘッジファンドの収益構造を簡潔に示すことは難しいです。しかしイメージを持ってもらうために、個別銘柄選択部分にフォーカスして収益機会の捉え方について解説したいと思います。
個別銘柄選択戦略の収益源泉をひとことで言うと「ミスプライス」、つまり価格の歪みです。ある銘柄の本源的価値と比較して、その市場価格が割高であったり、割安であったりするところを捉えようというものです。
ファンドの運用者はミスプライスが発生している時に、割安銘柄の買い(ロング)ポジションや、割高銘柄の売り(ショート)ポジションを構築します。そしてミスプライスが解消して本源的価値に回帰する過程で、ロングしている割安銘柄の価格が上昇、またはショートしている割高銘柄の価格が下落することでリターンが生まれます。
個別銘柄選択でリターンをコツコツと蓄積するためには、市場全体の大きな上下動、つまり市場リターンや市場リスクが障害になることもあります。このため同じ株式市場、さらには同じ業種セクターの異なる銘柄を対象にして、ロングとショートを組み合わせる。こうすることで、市場リスクや業種リスクを低減する。こうしたリスク管理を行っています。
投資家の不安が契機になることも
では具体的に、どのような時にミスプライスは発生するのでしょうか?
金武 実はミスプライスは日常的に発生しています。
■ある銘柄に関するニュースへの過剰反応が起こった時
■同業他社の銘柄が売られたことによる連想売り
上記の3つのような場面です。そして、そのミスプライスが発生した背景や理由にもよりますが、市場が一定程度効率的であればミスプライスは解消し、適正価格に回帰、正常化していきます。
最もミスプライスが発生しやすい局面は、ショック時など投資家の不安心理が高まる時や、投資家のリスク許容度が低下するような場合です。このような局面で、運用者はポジションのリスクを落とすために、保有銘柄を売却しようとします。しかし直ちに売れるのは流動性や安定性があり、ファンダメンタルズも良いことから買い手が付きやすい、いわゆる優良銘柄となります。つまり「良い銘柄ほど売られる」という現象が発生し、相対的に良い銘柄が割安で、そうでない銘柄が割高になるといったミスプライスが発生します。
この逆のパターンもあります。ショート・ポジションを縮小するためには、ネガティブ判断によりショートしていた銘柄を市場から買い戻すことによりポジションを低減させます。これにより、ネガティブ銘柄ほど価格が相対的に上昇するという現象も発生します。
ショックの後に収益機会
ミスプライスが正常化される過程で、ヘッジファンドの収益が生まれることは分かりました。では、どういった局面あるいはケースでまとまった収益を得ることができるのでしょうか。
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